3年前に創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。バックナンバーを抜粋し、紹介する連載を時々掲載しています。 中日─ヤクルト戦でも大乱闘
今回は『1973年7月2日号』。定価は100円。
6月12日、小雨模様となった後楽園球場での
巨人─
阪神戦で事件が起こった。
8回、投球の判定に不満を持った大里球審に阪神の投手・
江夏豊が体当たりし、退場になったのだ。
もともと大里球審と阪神の相性はよくなかったようで、この試合でも6回、
田淵幸一の打席で雨を理由に大里球審がタイムを取った際、田淵が明らかに嫌そうな顔をした。
「雨はずっと降っていた。なぜあのタイミングでタイムなのか」と田淵。気勢をそがれ、ショートフライに終わっている。
そのあとハーフスイングのジャッジでも田淵が文句を言った場面があり、大里球審からは「次は退場」と言われていたようだ。
事件は8回裏、
王貞治の打席だった。2-2からインロー。これに大里球審がボールを宣すると、「ストライク、自信があった」という捕手の田淵が苦情を言い掛けたとき、マウンドの江夏が突き飛ばし退場。江夏は「田淵の代わりに俺が手を出した」と言い、田淵もまた、「あそこで僕が退場を食らったとしても仕方がなかったと思います」と語っていた。
翌13日、
中日球場の中日─
ヤクルト戦でも大乱闘があった。
延長10回裏にサヨナラのホームを踏んだ中日の
星野仙一とヤクルトの捕手の
久代義明がクロスプレーのあと、取っ組み合いとなり、両軍入り乱れての大乱闘となったのだ。
さらにそのあとには中日ファンがグラウンドに乱入し、ヤクルトベンチを襲撃する騒ぎもあった。
「ベースタッチにいったら久代に頭をミットでたたかれた」と星野が言えば、久代は「ブロックにいったら蹴飛ばされた」。
写真を見ると、星野は立ったままホームに突っ込み、そこに久代がブロックで立ちはだかっていた。
星野からしたら「タイミングはセーフなんだから邪魔するな」というところだったのだろう。
アメフト経験者の中日・
与那嶺要監督はすぐさまベンチを飛び出し、自らヤクルトナインに突っ込んでいったが、ヤクルト・
三原脩監督は落ち着いたもの。
「当然、あのケースでは捕手がブロックしますよ。星野君は投手だし、ブロックされたことがなかったんじゃないですか。滑り込めば問題なかったんですよ。血の気が多い若者だから仕方がない」と冷静に語っていた。
では、また。
<次回に続く>
写真=BBM