チーム屈指の飛距離

捕手ながら飛距離を出せる打撃が魅力の大城
眠っている潜在能力を出し切れていない――。こう評されるのが、
巨人で正捕手格の
大城卓三だ。2021年は自身最多の125試合出場で打率.231、11本塁打、37打点。本塁打は自己最高だが、打率は前年の.270から4分近く落としている。
「試合前のフリー打撃ではサク越えを連発します。飛距離はチーム屈指。体が大きいし振る力がある。あの打撃練習を見ると、成績は物足りないですね。20本塁打は打てる素材だし、変化球に合わせるのもうまいのでミート能力が低いわけではない。まだまだ上を目指せます」(スポーツ紙デスク)
強肩強打の大型捕手として入団し、1年目から83試合に出場。20年はチームトップの71試合の先発マスクをかぶり、打率.270、9本塁打、41打点といずれも自己最高の数字を残した。盗塁阻止率も前年の.172から.340と改善。リーグ連覇に貢献し、自身初のベストナインを受賞した。今年はさらなる飛躍が期待されたが、チームが終盤に大失速した影響もあっただろうか。リードに苦心する様子が見られ、9月に入ると6試合連続でスタメンマスクを外れた。自慢の打撃でも9月以降はノーアーチと精彩を欠いた。
野球評論家の
柴原洋氏は今オフに週刊ベースボールで大城の打撃フォームの連続写真を解析した上で、こう論じている。
「甘いボールに対してフルスイングをする際に体を振り過ぎてバットが出てこず、ポイントが合っていないことが多いです。そうやって打ち損じる。これは今の巨人の若手の選手に目立つ悪癖のように思います。大城選手の場合は、体格にも恵まれてパンチ力もあるのですから、もう少しバットを先に出すイメージで、体がついてくるくらいのほうが、良いように感じます。とらえる能力が高い選手ですが、体を振ってフルスイングではコンタクトできる確率は下がります。また、気になるのが、後ろに残そうとする意識と、それに付随しているであろう内側へのひねりです。(中略)ひねった分は戻さなければならず、そこからの回転となるため、開きが早くなったり、逆に間に合わずに遅れの原因になりかねません」
柴原氏も大城の潜在能力は高く評価している。文章の最後にこんな助言を送っている。
「現在一軍作戦コーチ(当時)の
阿部慎之助コーチが現役のときは、上体などをひねることなく、とてもシンプルに足を上げて打ちにいくだけの理想的なフォームでした。抜群のお手本がすぐ近くにいるのですから、参考にすべきだと思います。繰り返しになりますが、上半身は動かさず、下半身の移動だけを意識することができれば、考えもクリアになってコンタクトに集中できると思います」
阿部コーチの現役時代を参考に

現役時代、通算406本塁打を放った阿部
現役時代に球界を代表する捕手として活躍した阿部コーチは通算406本塁打をマーク。長打力だけでなく、コンタクト率も高かった。12年には打率.340で首位打者を獲得している。同じ右投げ左打ちの捕手で、阿部コーチが身長180センチに対し、大城は187センチと上回る。守備はもちろん、打撃技術、打席での心構えなど学ぶべき点は多い。
今季はリーグトップの盗塁阻止率.447と確実に成長の跡を見せている。後は持ち味の打撃で開眼できるか。大城が20本塁打以上を放つ活躍を見せれば得点力もグッと上がるだろう。来季こそ不動の正捕手を狙う。
写真=BBM