首脳陣、ファンから期待をかけられながら、なかなか殻を打ち破れない男たちがいる。潜在能力は十分。それが花開けばチームにとって大きな力となる。パ・リーグ6球団の今季こそ大ブレークが望まれる選手をピックアップする。 北海道日本ハムファイターズ
今季でプロ5年目を迎える清宮幸太郎。大学に進学した同世代選手も卒業し入団してくる年だ。高校通算111本塁打の実績を引っ提げて鳴り物入りで入団したスラッガーに、「今季こそ」の声は自然と高まる。2018〜20年までのシーズン本塁打は3年間とも7本止まりで、昨季は入団後初の一軍出場なしに終わった。本人も悔しさをにじませるが、それでも二軍で106試合に出場しイースタン・リーグ最多タイの本塁打王に輝いたことは、今季への大ジャンプにつながるはずだ。大幅ダウンに終わった契約更改では、「現状からはほど遠いですが、ホームラン30本」を目標に掲げた。
新庄剛志監督、そしてファンは清宮の本格覚醒を待ち望んでいる。
千葉ロッテマリーンズ
着実に力をつけつつある。今年、高卒4年目を迎える藤原恭大だ。開幕スタメンを手にした昨季だが、4月22日に二軍降格。ファームでバットを振り込むと、7月3日に再昇格を果たして鋭い打球を連発した。一軍復帰戦となった
楽天戦(ZOZOマリン)から前半戦終了14日までの9試合で打率.400。下半身の粘り強さが増し、体勢を崩されてもバットのヘッドを走らせ安打を放ち、4盗塁と果敢な走塁を見せて奮闘した。だが9月に死球を受けて一時離脱すると快音が止まってスタメン落ち。飛躍の兆しを見せつつ味わった悔しさ糧に今季は一軍フル出場へ。背番号も1に変わり、正中堅手を手にできれば、チームも自ずと活気づく。
オリックス・バファローズ
高卒1年目の2018年9月に右ヒジを疲労骨折し、翌19年は育成スタートとなった本田仁海だが、19年4月に実戦復帰して手術前より球速アップの154キロをマーク。7月には再び支配下登録と順調に回復して一軍デビューを飾り、昨年7月6日の楽天戦(京セラドーム)でプロ2度目の先発マウンドに上がった。初回に先制を許し、3回に
浅村栄斗に高めに浮いたスライダーを左翼席に運ばれるも、最速155キロの直球に130キロ台のチェンジアップなどを交えて5回2失点。プロ初先発の4回7失点KOから成長を示し、昨季はゲームメークした右腕に
中嶋聡監督も「飛躍してほしい1人」と言う。今年22歳を迎える男が台頭すれば、先発ローテーションはより強固になるのは間違いない。
東北楽天ゴールデンイーグルス
プロ2年目の昨季は一軍で34試合に出場して14安打、1本塁打、8打点、打率.187に終わった黒川史陽。必ずしも納得できる数字ではなかったが、その分、二軍でみっちりと経験を積み上げた。規定打席には未到達ながら48試合に出場して65安打、3本塁打、31打点、打率.319の好成績を残し、イースタン・リーグの優秀選手賞に選ばれた。左打席で見せるバットコントロールは秀逸で、左右の違いこそあるが浅村栄斗の後継者候補にも名前が挙がる。まだまだレギュラー内野陣のハードルは高いが、今季こそは一軍定着への足掛かりとなる活躍を見せたい。
福岡ソフトバンクホークス
昨季感じさせた飛躍の兆しを、田中正義は確かな結果として示すことができるか。5球団競合で注目された2017年入団のドライチも、気がつけば若手と呼ぶには微妙な立ち位置になった。ケガや不調などで入団からの4年間、まったく期待に応えられずにいたが、昨季は6月25日に2年ぶりとなる一軍昇格を果たすと、離脱なくシーズンを終えた。登板18試合は全試合中継ぎで、16回2/3を投げて防御率2.16と健闘。ピンチの場面でマウンドに上がり、堂々たる投球でピシャリと抑える場面も目立った。秘めたる実力のすごさを認める人は多い。エース・
千賀滉大も、「ファンの人も、選手も、みんな『正義がすごい』と思っている。本人が『常に試合に勝てるのが当たり前くらい』のマインドになれば、すごい選手になると思う」。自信を先に、これまでの期待を上回るブレークが待っている。
埼玉西武ライオンズ
プロ5年目の昨季、自己最多の8勝をマークしたが8敗を喫して貯金をつくることができなかった今井達也。ポテンシャルを考えれば物足りない成績だ。99四球はダントツでリーグワースト。制球難が悩みの種だが、それでも防御率3.30は規定投球回に達した14投手中、7位だ。ピンチを背負っても走者をかえさない投球ができたが、今季は「2点台前半を狙っていきたい」と防御率の良化を誓う。狙う勝ち星は15勝。「責任感を持って、年下の投手にも背中で示していきたいですし、投手陣を引っ張っていけるように練習を重ねていきます」。背番号11が目標を達成すれば、最下位からの優勝がグッと近付くはずだ。
写真=BBM