ダイヤモンドの華であるショート。野手の中では最も高い身体能力を求められると言っても過言ではなく、内野の要となるポジションだ。キャンプも中盤に達するが、果たしてパ・リーグ6球団の「ショート争い」の現状は? 福岡ソフトバンクホークス
レギュラー白紙は、今宮健太にとって悔しくて仕方がなかったはずだ。時折見せる美技も見事な堅実な守備は、今でもチームトップレベル。しかし、ここ数年は打撃不振に自身の故障離脱、コンディション不良なども相まって、出場試合数を減らすこともあった。「2022年は今後の人生を左右する1年になってもおかしくない」。そう位置づける新シーズンに向けて、遊撃のレギュラーはいまだ決まっていない。「開幕で、ショートで、レギュラーを獲れるように。自分のことだけを考えて仕事をガムシャラにやっている最中」。キャンプでは一際気合をみなぎらせた今宮の姿が印象的だ。2月12日の紅白戦では“チーム1号”を放つなど、オフから取り組んできた打撃力アップの成果も表れている。新助っ人のF.
ガルビスやルーキーの
野村勇ら新戦力とポジションを争うも、オフから新選手会長も務める背番号6が、文句なしで定位置に返り咲く。
オリックス・バファローズ
昨季、10代選手として球団史上最年少の開幕スタメンを果たした
紅林弘太郎が、今季も遊撃のレギュラー筆頭だ。京セラドーム5階席まで運ぶパワーでシーズン10本塁打を放っただけでなく、遊撃守備も試合をこなすごとに安定感が増し、三遊間の深い当たりも強肩でアウトを奪うなど攻守で着実にレベルアップ。高卒3年目もさらなる飛躍が期待され、今春キャンプは新型コロナに感染して出遅れ、宮崎でのキャンプ合流は2月10日も、12日の紅白戦で2安打2打点とアピール。ただ、定位置は安泰ではなく、堅守巧打のドラフト2位ルーキー・野口智哉がレギュラー争いに参戦。22歳の野口は二塁起用の可能性も高いが、若い2人がしのぎを削って内野のレベルを上げていく。
千葉ロッテマリーンズ
昨年4月に
エチェバリアが来日すると、正遊撃手の藤岡裕大は三塁スタメンの機会が増。今季も同布陣が予想されるが、藤岡は簡単に遊撃の位置を渡すつもりはない。昨オフの契約更改時から「もう1度、ショートで全試合出たいという思いを強く持ってやりたい」と口に。今春キャンプでも精力的にノックを受けて、遊撃守備を磨いている。二塁の
中村奨吾は昨季、2度目のゴールデン・グラブ賞を受賞。長く二遊間を組んでいた背番号8と再び鉄壁のコンビ形成へ。アクロバティックなプレーでチームの窮地を救ったエチェバリアのほか、堅守の2年目・
小川龍成とライバルは多いが、遊撃の位置をつかみにいく。
埼玉西武ライオンズ
今季も源田壮亮が西武の正遊撃手を務める。1年目の2017年にレギュラーの座を射止め、翌年から4年連続でゴールデン・グラブ賞、ベストナインを受賞。昨季は初の盗塁王にも輝き、日本代表として東京五輪で金メダリストの一員にもなるなど押しも押されもせぬ球界を代表する遊撃手だ。今季は打力アップを目標に掲げる。特に.256に終わったフルカウントでの成績向上を目指し、出塁率も上げていく。チームをけん引する主将としては3年目。昨季は42年ぶりの最下位と言う屈辱も味わっただけに、V奪回へ力を尽くしていく覚悟だ。
北海道日本ハムファイターズ
正遊撃手の確立はチームの重点課題。ドラフトでは社会人出身の2人の即戦力を獲得した。
水野達稀は持ち味のパンチ力ある打撃を実戦でも発揮。鉄壁な守備力を誇る
上川畑大悟は右ヒザ外傷性骨挫傷のリハビリ中で復帰には4~6週間かかる見込みだが、開幕に照準を合わせる。攻守にセンス光る高卒2年目の
細川凌平も正遊撃手候補。そして有望な若手に負けていないのが、昨季遊撃で111試合に出場した石井一成だ。元
広島の
前田智徳氏に打撃指導を受け、2月13日の練習試合、
楽天戦(金武)では4回一死一塁から右中間へ逆転2ランを放つなど、バットでアピールを続けている。堅守と強打を兼ね備えた遊撃手の台頭なるか、横一線のレギュラー争いに注目だ。
東北楽天ゴールデンイーグルス
楽天で遊撃の定位置争いを演じているのは、同じ1995年生まれの2選手だ。昨季は前半戦で小深田大翔が、後半戦で山崎剛が主に「一番・遊撃」を任されており、2022年の開幕スタメンにはどちらかの名前が書き込まれることになりそうだ。1月の自主トレから春季キャンプでも常に行動をともにし、アップ時のキャッチボールもこのコンビ。俊足巧打とタイプも似ている両者だが、内野の要を任されるには、守備力も欠かせぬ要素となる。特守も並んで受ける両者が、まったく同じ条件で競い合っている。
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