読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回はバント編。回答者は歴代2位の451犠打を誇る元西武ほかの平野謙氏だ。 Q.犠牲バントをする際、どの辺りを狙っていくのがいいのでしょうか。(長野県・匿名希望・15歳)
A.走者一塁なら一塁側、二塁なら三塁側がセオリーです どこにバントするかは、ランナーがどの塁にいるのかが重要でしょう。守備のシフトや個々の守備力、あとはランナーの足もあって一概には言えない部分もありますが、セオリーは出てくるのが遅れる内野手を狙う、ということです。走者一塁ならファーストはけん制球もあってすぐ出てこられませんから、一塁側、ファーストに捕らせるバントをします。走者一、二塁のときは、サードは三塁を空けられませんから、すぐ出てこられません。
逆にファーストはけん制球を受ける必要がないので、かなり思い切ってチャージしてくるはずです。このときは、きっちり三塁側に転がしてください。走者二塁なら一、二塁と同じですぐ出てこられないサードに捕らせます。このときはフォースプレーではないので、多少、打球が強くなっても大丈夫です。走者一、二塁よりは余裕をもってできると思います。
ただ、相手が思い切ったバントシフトをし、ファースト、サードがチャージしてきたら、また別です。僕はその際、ピッチャーに捕球させるバントをしました。このとき大事なのが、できるだけ打球の勢いを殺すことです。ピッチャーは投げてからしか前に出られませんが、ダッシュする距離自体は短いので、勢いが強いとやられてしまいます。さらに言えば、しっかり勢いを殺すことで、ピッチャーはほかの塁ではなく、一塁で殺す意識を持ちやすくなります。

イラスト=横山英史
投手前にバントをすると怒られたりすることもあるかもしれませんが、あくまでケースバイケースです。実は僕も「何でピッチャーにした?」と言われたことがありました。95年、
ロッテでバレンタイン監督とやっているとき、そう言われたことがあったようです。いや、僕自身は記憶にないんですが、そういう話をしているのを聞いたと言われたことがあります。推測ですが(笑)、メジャーはバントをさほど重視しないし、下がふかふかの天然芝なので、どうやったって勢いが死にます。だから先ほどの走者一塁なら一塁側、二塁なら三塁側とセオリーどおりやればよかったから、僕のやり方を不思議に思ったのかもしれませんね。
あと狙うコースでプラスするなら、ピッチャー、ファースト(サード)のちょうど真ん中に転がすことができれば、それぞれ譲り合いをして、捕るのを躊躇する可能性があります。走者を進める可能性は高くなると思います。
●平野謙(ひらの・けん)
1955年6月20日生まれ。愛知県出身。犬山高から名商大を経て78年ドラフト外で
中日入団。88年に西武、94年にロッテに移籍し、96年現役引退。現役生活19年の通算成績は1683試合出場、打率.273、53本塁打、479打点、230盗塁。
『週刊ベースボール』2022年1月17日号(1月5日発売)より
写真=BBM