日本の安打製造機

メジャー開幕前にレッズを退団した秋山
メジャー・リーグ開幕を目前に、MLB・レッズが
秋山翔吾の退団を発表した。今後はフリーエージェントとして米国で所属先を探すか、日本に復帰してプレーするか決断が注目される。
秋山は
西武在籍時に、シーズン最多安打のタイトルを4度獲得。2015年にマークした216安打はNPB歴代最多記録だ。17年に打率.322で首位打者を獲得するなど日本球界を代表する安打製造機として活躍した。体もタフで、15年から5シーズン連続フルイニング出場を達成。14年9月6日の
ソフトバンク戦(ヤフオクドーム)から継続中の記録を739試合に更新し、パ・リーグ記録、NPB歴代単独2位の記録を樹立した。19年オフに海外FA権を行使した際は複数球団による争奪戦となり、レッズと3年契約を結んだ。
メジャーでは結果を残せず
だが、異国の地で思い描いた活躍をできなかった。1年目の20年は54試合出場で打率.245、0本塁打、9打点。打撃不振に苦しんだが、9月はチーム最高の月間打率.317、出塁率.459を記録するなど一番打者に定着するなど光も見えた。
昨年は度重なる故障の影響もあり、88試合出場で打率.204、0本塁打、12打点。外野のレギュラー陣が同年オフに他球団に移籍し、3年契約最終年の今季はチャンスだったが、オープン戦7試合出場で22打数4安打、打率.182と結果を残せなかった。秋山は退団が決まった際、レッズの公式ツイッター(日本語版)で、「シンシナティで過ごした時間、出逢ったスタッフ、選手の方々にとても感謝しています。またどこかでプレーする姿を見せられる時まで準備をしたいと思います」と思いを綴った。
メジャーでは試練を味わったが、今後の野球人生で大きな糧になるだろう。スポーツ紙記者は「33歳とまだまだ老け込む年ではない。もし日本球界に復帰という道を選択したら、複数球団による争奪戦になる可能性が高いと思います。高度な打撃技術は錆びついていないですし、外野の守備も球際に強い。守備でいえばメジャーでもハイレベルな部類でした。打席で何を意識しているか、どういうイメージで臨んでいるかなど野球に取り組む意識も高い。若手の良きお手本になるでしょう」と評価する。
苦しい戦いが続く古巣
古巣の西武ファンからは「復帰待望論」が強い。18、19年にリーグ連覇した際は破壊力抜群だった「山賊打線」のリードオフマンとして、不可欠な存在だった。秋山がレッズに移籍して以降、西武は20年に3位、昨年は42年ぶりの最下位に沈んだ。秋山の後釜となる一番打者を固定できず、得点力が低下。今年も
山川穂高、
森友哉と主軸が相次いで故障により戦線離脱して苦しい戦いが続いている。外野陣は
鈴木将平、
愛斗、
岸潤一郎、
若林楽人と将来が楽しみな若手が多いが、秋山が復帰すれば大きなプラスアルファになる。
また、ソフトバンクも獲得調査に乗り出していることがスポーツ各紙で報じられた。主軸の
栗原陵矢が3月30日の
ロッテ戦(ZOZOマリン)で外野守備による味方選手との激突で負傷。左ヒザ前十字靱帯断裂、および左外側半月板損傷の左ヒザ負傷の大ケガで長期離脱し、左翼のレギュラーを固定できていない。外野の層が薄い他球団も獲得を検討することは十分に考えられる。
米国でもう一度メジャー復帰を目指すか、それとも日本球界で再チャレンジするか――。秋山の決断が注目される。
写真=Getty Images