準決勝後には悔し涙
横浜商高の主将・長野圭汰は三番・遊撃手として躍動。桐光学園高との準決勝では、再三の好守備を見せている
0対11。桐光学園高との準決勝(4月30日)で8回
コールド負けを喫した横浜商高の主将・長野圭汰(3年)は試合後、悔し涙を流した。
「何もできなかった……(涙)。昨秋の星槎国際湘南との3回戦では、川又隆之介(2年)が踏ん張ってくれたのに、自分たちが打てなくて負けて……(0対5)。今回も同じ結果を招いてしまい、申し訳ない。4回(5失点)、8回(5失点)はビッグイニングにされましたが、投手陣の責任ではありません。野手が取れるところで、得点できなかったのが敗因」
桐光学園高との攻撃力の差は、何だったのか。
「全員が同じ気持ちで、後ろ、後ろへつなぐことが徹底できなかった」
右打者の三番・長野は4打数4安打と気を吐いたが主将の立場であり、喜べるはずもない。
「自分の結果よりもチームの勝利。1本出たとしても、走者がいなければ得点にならない。打撃の調子は良いか、悪いかと言われれば、悪い。気持ちを出していけば、打てる」
遊撃守備では、再三の好フィールディングを披露した。50メートル走6秒6、遠投は85メートルと決して目立った数字ではない。しかし、球際に強く、捕球してからのスローイングは正確。幾度も俊敏なプレーに目を奪われた。「ゴロ捕球、基礎練習を積み重ねてきました。取れるアウトを必死に取る」。長野の姿勢は参考になる。つまり、心掛け次第で、動きが変わることを、実戦で証明したのである。
好きな選手は
ヤクルト・
山田哲人。長野は「打って、守れて、走れるのが一番の良い選手だと思います」と理想のプレーヤー像を語る。
夏の甲子園は90年が最後
横浜商高は「Y校」として親しまれる古豪だ。ブルーのユニフォームに誇りを持ち、グラウンドに立つ。夏の甲子園は1990年を最後に遠ざかっており(春は97年)、主将・長野は「名門復活」への思いは強いものがある。
「昨年の先輩方がやり方を変え、昨春の県大会では慶應(3回戦)、横浜隼人(4回戦)に勝ち、伝統と文化を残してくれました。今年のスローガンは『開花』。先輩が築いた土台を引き継ぎ、自分たちが花を咲かせます」
横浜商高は今春の県大会4強により夏の県大会の第1シードを獲得したが、主将・長野は表情を引き締める。
「関係ないです。チャレンジャー精神。攻めていくだけです。でないと、夏も同じ負けを繰り返す」
10分間の取材中、危機感を何度も口にし、横浜スタジアムを後にした。
文=岡本朋祐 写真=矢野寿明