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プロ野球回顧録

高等技術が隠されていた内角打ち。平成唯一の“三冠王”松中信彦のフルスイング【プロ野球回顧録】

 

柔軟になったスイング


04年には打率.358、44本塁打、120打点で三冠王に輝いた松中


 圧巻のパワーと巧みなバットコントロールに支えられたフルスイングで九州ホークスの黄金期を築いた松中信彦。1996年にアトランタ五輪の銀メダル獲得に貢献したエリートだが、プロの道のりは険しかった。

 まず、金属バットと木製バットの違いに苦しめられる。97年のダイエー入団から2年間は二軍生活のほうが長い。一軍定着は日本一イヤーの99年。四番打者の小久保裕紀とともに、ひたすら打撃練習に励み、いかに広い福岡ドーム(現PayPayドーム)でホームランを打つかの試行錯誤。それはいつしかホークス名物となった。

 2000年には無冠ながらMVP。だが、打点王となった03年は両ヒザを痛め、ごまかしながらの出場に。これが打撃を飛躍させる劇薬となった。

 専属トレーナーとの肉体改造や節酒もさることながら、「いい形で打たなければいけない」という固定観念がなくなったことでスイングが柔軟になる。それまでの本塁打はライト方向へのものがほとんどだったが、センター方向への本塁打も増えた。

 特に内角球をスタンドインさせるスイングは松中ならではのものだ。そのフルスイング一閃には、バットを上からボールの内側へ入れていき、さらにスライス回転をかける、という高等技術が隠されている。そして04年、初の本塁打王と首位打者、2年連続打点王で、史上7人目、11度目の三冠王に輝いた。時代が平成となって初の、そして唯一の三冠王だ。

写真=BBM
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