開幕からは理想的な一番

粘り強さが生まれた打撃での貢献度は高い吉川
広島に同一カード3連勝を飾り、息を吹き返した
巨人。その立役者が骨挫傷から戦列復帰した
吉川尚輝だ。
開幕から一番打者を務め、打率.341のハイアベレージをマーク。一番の有力候補だった
松原聖弥の打撃不振もあり、リードオフマンが不安材料と言われていたが、吉川の活躍でその懸念を払拭した。3月31日の
ヤクルト戦(神宮)から14試合連続安打をマーク。4月6日の広島戦(マツダ広島)では1点差を追いかける8回一死一塁で右翼ポールに飛び込む逆転2ランを放ち、チームを救った。野球評論家の
伊原春樹氏も週刊ベースボールのコラムで、「やはり吉川尚輝が一番に定着したことが打線に流れを呼んでいる。吉川は思い切りのいい打撃をするが、しつこさも兼ね備えているのが特徴だ。それはカウント別の打撃成績にも表れている。2ストライクに追い込まれても打率.310をマーク。出塁率も.383を誇っているが、理想的な一番と言っていいだろう」と高く評価していた。
ところが、5月4日の広島戦(マツダ広島)で左肩甲骨付近に死球を受けて負傷交代。遊撃・
坂本勇人も離脱していた中で、吉川の戦線離脱はチームにとった大きな痛手だった。二遊間のレギュラーを欠いた翌5日以降は3勝6敗と苦しい戦いが続いた。吉川は17日の広島戦(宇都宮)から復帰。託された打順は一番でなく、ポイントゲッター役も担う三番だった。
「吉川が離脱以降、12日から
丸佳浩を一番に据えていたのでそのままの流れでいきたいという思いがあったのかもしれません。吉川は三番を打った経験がありますしね。ミート能力が高いだけでなく、パンチ力もあるので力を発揮できる打順だと思います。広島に3連勝してチームも生き返った感じがします」(スポーツ紙記者)
復帰後も好調をキープ
吉川は戦列復帰後も好調をキープしている。広島3連戦は11打数5安打。19日の同戦で3回二死一、二塁から
九里亜蓮のツーシームをはじき返す遊撃適時内野安打を放つと、6回も中前打、8回は四球と3度の出塁でチャンスメークした。
意外なことに吉川はプロ5年間で規定打席に到達したシーズンが一度しかない。昨年は打率3割を超えていた6月上旬に、左手中指骨折で2カ月間の戦線離脱。8月に復帰以降は良い状態が続かず、108試合出場で打率.272、5本塁打、25打点、7盗塁に終わった。昨季は出塁率.313だったが、今年は追い込まれても打席で粘りがある。ファウルでカットして際どいボール球を見逃す。相手バッテリーにすれば投げる球がないだろう。
大谷と同じ「94年世代」
二塁の守備面でも貢献度が高い。俊足を生かして守備範囲が広く、幾度もチームの窮地を救ってき。昨季は二塁で99試合出場し、守備率.992はリーグトップ。二塁は広島・
菊池涼介が13年から9年連続ゴールデン・グラブ賞を獲得している。名手の牙城を崩すのは非常に難易度が高いが、吉川も十分に狙える選手だ。
95年の早生まれだが、エンゼルス・
大谷翔平、カブス・
鈴木誠也と同学年の「94年世代」だ。持っている能力の高さを考えれば、吉川もスーパースターになる可能性は十分に秘めている。チーム事情に応じて一番、三番と固定しないかもしれないが、V奪回に向けて今後の活躍が必要不可欠な選手であることは間違いない。
写真=BBM