佐藤輝への投球は完璧

5月27日の阪神戦に先発したロッテ・佐々木朗。6回を4安打、7奪三振で無失点だったが勝利は得られず
ピッチャーとして“未完成”であるところがロッテ・
佐々木朗希の魅力だと思う。5月27日のロッテ戦(ZOZOマリン)で先発した佐々木朗。結果だけを見れば6回、90球を投じて4安打、無四球、7奪三振で阪神打線をゼロに封じ込んだ。しかし、細かい面を見ればピッチャーとして“未完成”の部分が垣間見える。
例えばランナーを出してクイックになると、体の開きが早くなって腕が付いてこなくなり、シュート回転してボールが抜けるシーンが見られた。4回にはゴロの処理を焦ってファンブルしてアウトにできず。暴投で二塁へも進塁された。
糸原健斗には2安打を浴びたが、コンパクトな打撃でうまく逆方向にはじき返された。
あわや2試合連続完全試合というピッチングを見せられ、佐々木朗希という投手は完成されていると錯覚してしまうが決してそうではない。この日は阪神打線がファウルで粘って球数をかさんだ面もあったが、いつもより早くバテているようにも感じた。
もちろん試合序盤、まだ体がフレッシュなときのピッチングは圧巻だった。例えば2回、先頭打者の四番・
佐藤輝明と対決したシーンだ。初球、内角高めに158キロの直球を投げ込み見逃し。2球目はワンバウンドする145キロのフォークだったが佐藤輝は空振り。すごくいい軌道から落ちた。3球目は高めの釣り球で161キロの直球。ハーフスイングでバットが止まりボール。4球目は定石どおり低めへ146キロのフォークでバッが空を切る。佐藤輝を完全に翻弄して空振り三振を奪った。
ただ、昨日は中6日登板を続けて4試合目。やはり、ちょうど疲労が蓄積されてきたころだったのだろう。160キロを超える直球を投げ、150キロに迫るフォークを投じる。カーブやスライダーで抜くことも少ない。ほぼ、全力投球で出力の高い投球を続けるからスタミナを欠くのは仕方のない面もある。逆に言えば、そこが伸びしろであるのだろうが、この高い出力を維持し続けられる体とはどのようなものなのか想像できない。
ここまでリーグトップタイの5勝を挙げ、同2位の防御率1.33。奪三振は2位・
千賀滉大に30個差をつけるダントツ1位の94個。“未完成”ながら、圧巻の成績を残す佐々木朗のピッチングには“すごい”という言葉しか出てこない。高いレベルの“未完成”。今季はまだ誰もが見たことのない境地に達する過程のシーズンとなるだろうが、見逃すことはできない。
写真=榎本郁也