すべては大山から
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6月17日のDeNA戦で2本のアーチを放った大山
まさに猛虎復活。
阪神が6月に入ってから負けない。6月20日時点で6連勝、5連勝が1回ずつ。月間成績が11時3敗でアッという間に最下位を脱出したと思ったら、気が付けば3位にまでジャンプアップしていた。
「自分たちの戦いが本当にできていますし、全員が前を向いて一つになって戦えているんで。明日、もう1個(勝ちを)つなげていくような試合を皆さんにお見せしていきます」
矢野燿大監督の言葉も歯切れがいい。何せ6月は五番を打つ
大山悠輔が9本の本塁打を放っている。ペナントレース再開後の6月17日のDeNA戦(甲子園)では2本のアーチ。この試合、交流戦防御率0.00のエース・
青柳晃洋が、まさかの3ランを浴びるなど4失点で6回降板。勢いをつけたい試合で、DeNA打線に粘られていた。それを振り払ったのが大山の一発だった。
もちろん、大山の本塁打が目につくが、猛虎打線自体も状態が上がってきている。六番を打つ
糸原健斗が、この試合の初回に二死満塁から2点タイムリーを放つなど2安打の活躍。クリーンアップが仕事をできなかった場合でも、そのあとの役割をこなしているのは大きい。
ただそれ以上に目立つのは一~三番の働きだろう。6月に入り、一番から
島田海吏、
中野拓夢、
近本光司の並びが定着。6月10日からの5連勝中に島田は5本の安打を放ち.316の出塁率を記録。中野はつなぐ打撃もあるものの4安打に2つの四球を選ぶなどしぶとい。そして三番の近本の状態がかなりいい。5試合で8安打、打率.381、出塁率.430という数字を残している。
つまり四番・
佐藤輝明と五番・大山の打席で走者が塁にいるという状況が作り出されているのだ。佐藤輝も調子を上げてきている。ここ6試合で三振はわずか2。本塁打は1本のみだが、大山の10打点と1つしか変わらない9打点を挙げていることも、猛虎打線が機能している証拠だ。もちろん、すべては大山のバットが振れているからだ。そこまでつなげば何とかなるという意識が、打線の好調を後押ししている。
投手陣の頑張りが好影響に
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6月18日のDeNA戦では伊藤が9回3安打1失点で3勝目をマーク
「今は線でね、攻撃できているところがあるんで、全体の状態も上がってきている。ピッチャーはずっと頑張ってくれているんでね、チーム全体としてはいい流れで、いい試合ができているん」と矢野監督は言う。
当然、得点を奪っても投手陣が打たれたら勝てない。だが、投手陣が粘り強く投げていることも大型連勝が続く要因だ。先発陣は相変わらず安定し、ここ6試合で2人も完投投手が出た。これだけ安定していれば、リリーフ陣の体力も軽減できる。セットアッパーの
湯浅京己は休養のため抹消されていたが、交流戦明けの17日に一軍昇格。逆に13日にはクローザーの
岩崎優を休養のため抹消という余裕の措置が取られている。それも、リリーフ陣が先発陣と同様に安定しているからだ。岩崎の代役クローザーの
ラウル・アルカンタラも好調だ。
「連勝というのは結果的にもちろんすごく大きいし、(試合の)中身もしっかりしているというところでは、自信にして戦っていけるような試合運びをしてくれている」と矢野監督は手応えを感じている。
現在は3位だが、借金は5。まずは勝率5割を目指し、1つずつ貯金を重ねていくだけだろう。だが、気がつけば2位、いつの間にか優勝争いも……という日も近いのでは、と思わせる猛虎の快進撃といえるのだ。
写真=BBM