混戦模様のパ・リーグ。前半戦は各球団で新星たちの活躍が目立った。首位の
ソフトバンクから5位・
ロッテまで6ゲーム差でひしめいている。勝負の夏場に向け、彼らの奮闘がチームの命運を握っている。
※成績は6月26日現在 千葉ロッテマリーンズ
・松川虎生(ロッテ)
今季成績 37試合出場、打率.163、0本塁打、7打点、0盗塁
高卒ルーキーであることが信じられない。強肩、ブロッキング技術、キャッチング、配球術は目を見張るものがあり、投手陣の信頼をがっちりつかんでいる。今季ドラフト1位で入団して開幕スタメンを飾り、
佐々木朗希が4月10日の
オリックス戦(ZOZOマリン)で完全試合を達成した際はバッテリーを組み、大記録をお膳立て。佐々木朗が20歳、松川が18歳と2人合わせて38歳の「黄金バッテリー」が歴史に名を刻んだ。打力はプロの一線級の投手たちへの対応に試行錯誤しているが、パンチ力があり将来のクリーンアップ候補として期待がかかる。威風堂々とした立ち振る舞いに大物の雰囲気を漂わせる。今年のパ・リーグ新人王の最有力候補であることは間違いない。
福岡ソフトバンクホークス
・藤井皓哉(ソフトバンク)
今季成績 28試合登板、4勝0敗1S8H、防御率0.61
開幕一軍入りを果たし、今季初登板で1失点したが、3月27日の開幕3戦目・
日本ハム戦(PayPayドーム)から21試合連続無失点を記録。150キロを超える直球にキレ味鋭いスライダー、四国IL・高知で習得した独特の軌道のフォーク「フォースラ」が威力を発揮。ソフトバンク首位快走の「陰のMVP」と形容されるほど貢献度が高い。2015年ドラフト4位で
広島に入団したが通算1勝のみで20年に退団。四国IL・高知を経て昨年12月にソフトバンクと育成契約を結んだ。開幕前に支配下登録され、抜群の安定感で「勝利の方程式」に不可欠な存在になっている。ソフトバンクは
大関友久、
渡邉陸ら育成出身の選手たちの活躍が目立つ。藤井もリーグ優勝に向け、右腕を振り続ける。
北海道日本ハムファイターズ
・北山亘基(日本ハム)
今季成績 27試合登板、3勝5敗7S4H、防御率4.94
ドラフト8位右腕が若手主体の「BIGBOSS野球」の象徴的存在になっている。最速156キロの直球、スライダー、フォークを織り交ぜて2月の実戦から存在を強烈にアピールすると、開幕投手に抜擢された。2回無失点と大役を果たすと、その後は守護神に定着。4月6日のロッテ戦(札幌ドーム)でチームのサヨナラ勝ちを呼び込む快投でプロ初白星を挙げた。3、4月は10試合登板で3勝1敗1セーブ1ホールド、防御率2.25と快投を続けたが、相手も研究してくる。5月以降は打ち込まれる場面が目立つようになったが、BIGBOSSは大事な場面で起用し続けている。期待の大きさを表していると言えるだろう。最下位からの逆襲に向け、キーマンになる存在だ。
オリックス・バファローズ
・近藤大亮(オリックス)
今季成績 16試合登板、1勝1敗1S8H、防御率0.60
「気迫の右腕」が復活の時を迎えようとしている。2017年から3年連続50試合以上登板して計64ホールドを挙げたが、20年9月10日に右ヒジ内側側副靱帯再建術を受け、同年オフに育成契約へ。背番号「20」から「124」になった。懸命なリハビリ生活を送り、今年4月24日に支配下昇格すると、背番号「20」で3年ぶりに一軍の舞台に戻ってきた。同月30日の
西武戦(京セラドーム)で973日ぶりの白星をマーク。150キロを超える直球は打者の手元でホップするような軌道でうなりを上げる。目下13試合連続無失点と抜群の安定感。昨季はリーグ優勝の輪に入れなかっただけに、今年はリーグ連覇で仲間たちと喜びを爆発させたい。
埼玉西武ライオンズ
・滝澤夏央(西武)
今季成績 29試合出場、打率.239、0本塁打、4打点、1盗塁
球界最少の身長164センチ。少年のようなあどけない表情を浮かべる高卒1年目の「ナツオ」がシンデレラボーイになった。関根学園高から育成ドラフト2位で入団。無名の存在だったが、正遊撃手・
源田壮亮が故障で戦線離脱し、5月13日に支配下昇格。即一軍に上がると、同日の
楽天戦(ベルーナ)に「二番・遊撃」でスタメン出場し、逆転勝利の足掛かりとなるプロ初安打をマーク。翌14日の同戦では7回に右中間を割る同点適時三塁打を放ち、相手の暴投の間に勝ち越しの本塁生還と好走塁を見せる。2夜連続のお立ち台で全国に名を轟かせた。遊撃の守備が安定していることから、源田の復帰後も一軍に帯同。代走や守備固めなど途中出場の機会が多いが、成長の大きな糧になっているだろう。
東北楽天ゴールデンイーグルス
・武藤敦貴(楽天)
今季成績 23試合出場、打率.302、0本塁打、6打点、0盗塁
高卒3年目の若武者が躍動している。打力が課題だったが、力強いスイングで安打を重ねている。6月9日の広島戦(楽天生命パーク)で8回に2点左中間適時三塁打を放つなど猛打賞3打点の大活躍。お立ち台では「僕の(応援)タオルを持っている方、あんまりいないんかな。1、2、3……560! 結構いますね。この緑とオレンジのタオル。買ってください!」と呼びかけてファンの心をがっちりつかんだ。身体能力の高さは都城東高のときから定評があった。1年秋からエースで四番と二刀流でフル回転し、直球は最速142キロを計測。3年から外野に転向し、俊足と強肩は高校トップレベルだった。6月19日のソフトバンク戦(PayPayドーム)では一番を務めた。将来のリードオフマンとして期待がかかる。
写真=BBM