持てる力を発揮させることに主眼
法政二高は7月9日、神奈川大会の開幕試合に登場し、横浜桜陽高との1回戦を突破した
神奈川で春2回、夏9回の甲子園出場を誇る法政二高は1988(昭和63)年夏を最後に全国舞台から遠ざかる。エース右腕・
柴田勲(元
巨人)を擁し、60年夏と61年春に連覇しているが、平成時代は一度も聖地の土を踏むことができなかった。
7月9日、神奈川大会は3年ぶりに横浜スタジアムで開会式が行われ、法政二高は直後の開幕試合(対横浜桜陽高)に登場した。
母校・法政二高を指揮する絹田史郎監督によれば「開幕戦は、最近では記憶にない」と、独特な緊張感の中で行われた。前日までは定期試験があり、調整も大変だった。また、コロナ禍により実現していなかった学校応援(吹奏楽部、チアリーダー)が3年ぶりの復活。選手にとっては入学以降、初めての有観客での雰囲気だった。しかも、舞台は神奈川のメーン会場・ハマスタ。7対0の7回
コールドで1回戦を突破したものの、大会の「入り」の難しさを実感した初戦となった。
「スタンドの声援を、力に変えてくれれば良かったですが……。シートノックまでは動きが良かったですけど、試合に入ると全体的に硬かった。2回戦は春の王者・桐光学園。厳しい試合になることは、覚悟しています。9回を終えて1点差で勝つ展開に持ち込んでいきたいと思います」
昨今、法政二高は「古豪」と呼ばれることが多いが、絹田監督はこう受け止めている。
「過去の栄光にはこだわりがありますし、選手たちには、甲子園で連覇した学校であるプライドを持て、と言っています。法政二高の野球を引き継いでいく中で結果が出れば良いですが、それは、相手があること。持てる力を発揮させることを主眼に置いています」
この日は柴田氏のほか、多くのOBがスタンドに足を運び、後輩たちにエールを送った。岡田敏平幹事長はOB会としての展望を語る。
「現場を指導する絹田監督がやりやすいように、環境を整えることが、われわれの役割です。2021年から大島(公一、元
オリックスほか)が法大の助監督に就任し、高大連携を強化していきたいと考えています。また、将来的には
高田誠(元巨人ほか)にもアドバイザー的な立場でサポートしてもらいたい、と。繰り返しになりますが、あくまでも絹田監督の要望に応えていくのが大前提です」
「段階を踏んでいかないといけない」
OBの願いは当然、甲子園出場である。しかし、30年以上遠ざかっている現状、しかも激戦区・神奈川を勝ち上がるのは相当なパワーと鍛錬が必要だ。岡田幹事長は言う。
「段階を踏んでいかないといけない。まずはベスト8。それを継続した上で次はベスト4。そのためにも、基礎練習を大事にしないといけないと思います」
法政二高と言えば「ドジャース戦法」を推奨した元監督・田丸仁氏のスタイルが伝統として根付く。つまり、攻守にスキのない野球だ。
絹田監督は横浜桜陽高との1回戦でフライアウトが多かった現状に「強い、低い打球を打っていかないといけない」と繰り返した。
第1シード・桐光学園高との2回戦(7月12日、横浜スタジアム)で、伝統校の真価が問われることとなる。
文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎