本塁打、打点の二冠は固い

村上の「打率」の推移、ランクに目を凝らしたい
オールスターが終わり、ペナントレースは後半戦に突入した。記録に目を移せば、やはり
ヤクルト・
村上宗隆の三冠王なるかは、最大の注目ポイントの一つだろう。8月3日時点で39本塁打、98打点は2位を大きく引き離してリーグトップ。打率は.321で3位だが、トップである
中日・
大島洋平の.329は十分に射程圏だ。自身も「狙える位置、そこに僕がいるのはチャンス。達成できるように」と意欲を燃やしている。
言うまでもなく三冠王とは1シーズンに1人のバッターが「打率」「本塁打」「打点」の打撃3タイトルを獲得することだ。これまでに1リーグ時代の
中島治康(元
巨人ほか)を含めて7人、11度しか達成されていない。完全試合は今季の
ロッテ・
佐々木朗希が16人目、16度目。「打率3割、30本塁打、30盗塁」以上のトリプルスリーが10人、12度であることを考えると、やはり三冠王は大記録中の大記録だ。
村上の三冠王における最大のハードルは打率だろう。過去の例を見てもそうだ。戦後初の三冠王となった
野村克也(元南海ほか)は1965年に達成する前年まで3年連続で本塁打と打点の打撃2冠に輝いていたが、この年にキャリア唯一の首位打者を打率.320でもぎ取り、栄誉に浴した。
本塁打王15度、打点王13度の史上最強打者、
王貞治(元巨人)も首位打者は5度で、そのうち三冠王は2度。本塁打と打点の打撃2冠にとどまったのは実に9度に及ぶ。ちなみに68年から70年まで3年連続で首位打者を獲得し、当然のように本塁打王にも輝いていたが三冠王は逃した。その間、「ON」の相棒である
長嶋茂雄(元巨人)が3年連続で打点王を獲得したからだ。
3度の三冠王に輝いた「ミスター・トリプルクラウン」
落合博満(元ロッテほか)は、同じ強打者でもタイプが違うと言える。「打率4割を打てと言われれば、いつでも打てる。でも、それじゃ面白くない」と言っていたように、安打を打つ絶対的な能力があり、その上で長打も放てるイメージだった。村上はやはり「まず本塁打」という強打者。ライバルとの兼ね合い、首位打者のラインがどこになるかという、運にも左右されるかもしれない。
三冠王を争うと目された巨人・
岡本和真の停滞もあり、本塁打と打点に関しては故障がない限り村上の「当確」と言っていい。三冠王の「ライバル」は強打者ではなく、大島や
佐野恵太、
宮崎敏郎の
DeNA勢といった打率ランキング上位にいる巧打者たちということになる。村上の三冠王の行方を追うとき、まず目を凝らすべきは「打率」だ。
写真=BBM