2016年にセ・リーグの最多セーブ投手になった澤村拓一投手が海外FA権を取得。レッドソックスと契約を結んだのは21年2月16日。契約期間は2年間で、3年目は球団と澤村側の双方が選択権を持つというものだった。 レッドソックスで55試合に登板

レッドソックス時代の澤村
17日にはオンラインの入団会見が行われ「世界の優れたプレーヤーたちが集まるメジャー・リーグで、自分の力がどれだけ通用するか試したいなという気持ちはこの数年間、強かった。チームのために自分がいま何をできるかということを考えながら、今年1年間
ボストンのために戦えたらなと思っている」と、メジャー1年目に臨む心構えを口にした。
レッドソックスを選ぶにあたり、
巨人の先輩であり、あこがれの存在である
上原浩治の影響が大きかった。上原は2013年にクローザーとしてレッドソックスをワールド・シリーズ優勝に導いた。この年のリーグ優勝決定シリーズではMVPに選出されている。その上原の背番号19でメジャーの舞台に立った。
デビューは4月2日の開幕戦だった。0対3と負けている9回に登板。オリオールズ打線と対決した。三振と三ゴロで二死としたあと、
フレディ・ガルビス(現
ソフトバンク)に二塁打を喫したが次打者を打ち取り、1回を無失点と上々の結果だった。
4月11日のオリオールズ戦では10対7とリードした7回途中から1回1/3を無失点に抑えて初ホールドを記録した。4月23日のマリナーズ戦では4回途中に二番手として登板し、1回1/3を無失点で投げて初勝利を挙げた。なおこの試合の敗戦投手は先発して4回2/3で5失点の
菊池雄星だった。結局1年目のレギュラーシーズンはチーム4番目の55試合の登板で5勝1敗0セーブ10ホールド、防御率3.06だった。
レッドソックスはワイルドカードでポストシーズン進出。澤村は
ヤンキースとのワイルドカード・ゲーム、レイズとの地区シリーズでは出番がなかったが、アストロズとの優勝決定シリーズでは3試合に登板。第1戦では1/3で1失点だったが第3戦は12対3と大量リードの9回を三者凡退で終え、第5戦は2/3回を無失点だった。アストロズに2勝4敗で敗れ、澤村の1年目は終わった。コロナ禍でFA市場が停滞したため契約締結が遅くなり、キャンプ合流が遅れて始まったが、速球とスプリットでチームの力になった。
『週刊ベースボール』2022年9月26日号(9月14日発売)より
文=樋口浩一 写真=Getty Images