オリックスの連覇で幕を閉じたパ・リーグ。現在はポストシーズンの真っ最中だが、激闘を繰り広げたシーズンでチームのMVPは誰になるのか。パ・リーグ6球団「2022年MVP」を選んだ。 オリックス・バファローズ
問答無用でMVPは山本由伸だろう。いずれもリーグトップの15勝(5敗)、防御率1.68、205奪三振、勝率.750と史上初の2年連続投手主要4冠に輝いた結果ばかりではなく、内容でもチームを鼓舞。6月にはノーヒットノーランを達成し、3ゲーム差をつけられ、マジック点灯も許していた中で迎えた今季最後の
ソフトバンクとの直接対決3連戦の初戦(9月17日)は、圧巻の4安打完封勝利。後半戦は負けなしと、逆転優勝Vロードを演出した立役者だ。最速159キロの直球、フォーク、カットボールも150キロに迫る球威に加え、カーブでカウントを奪い、意表を突いて決め球にも使うなど投球術も光る右腕。総合力が突出しているエースがリーグ連覇を手繰り寄せた。
福岡ソフトバンクホークス
選手会長がグラウンドでも攻守にチームを支えた。今宮健太にとっては例年とは違う思いで迎えたシーズンだった。というのも、
藤本博史監督は遊撃のレギュラーを白紙に。しかし、シーズンが始まってみれば、有無の言わさぬプレーで遊撃の定位置を取り戻した。特に今季は打撃面で進化を見せた。「コンパクトにバットを振る」。打てなくてもブレることなく貫いた結果は、5年ぶりの規定打席到達、リーグ4位の打率.296に表れている。シーズン最終盤は今季限りで退団する
松田宣浩に代って“熱男魂”を体現。レギュラーシーズンは最後の最後に悔し涙を流したが、日本一に向けてもう1度攻守でチームを導いていく。
埼玉西武ライオンズ
今季、シーズン終盤まで優勝争いを演じたチームだが原動力は投手陣だった。4年連続チーム防御率がリーグワーストから同トップへ躍進。先発陣で、その中心にいたのが高橋光成だった。自己最多の12勝を挙げ、防御率も2.20と昨季の3.78から大きく良化。また、本人が最もこだわるイニング数もリーグ2位の175回2/3に達し、充実のシーズンとなった。勝敗の結果に一喜一憂することなく、常にブレずにやるべきトレーニングと修正を繰り返し続ける姿には、いよいよエースの風格が漂いつつある。ソフトバンクとのクライマックスシリーズ・ファイナルステージ初戦(PayPayドーム)では6回5失点に終わったが、悔しい経験を糧にして、またひと回り大きくなる。
東北楽天ゴールデンイーグルス
今季の個人成績を見ると、打率では
松本剛(
日本ハム)、
吉田正尚(オリックス)の上位2人に大きく水をあけられるもリーグ3位の打率.298。安打(161)、二塁打(36)では堂々のリーグトップとなった島内宏明。昨季の打点王に続いて最多安打のタイトルを獲得し、2年連続でタイトルホルダーとなった。四番打者として、十分な働きだったと言える。77打点はチーム内で
浅村栄斗の86打点に次ぐ数字。6月22日の日本ハム戦(盛岡)、同点の9回二死一、二塁の場面で右翼席に飛び込む劇的なサヨナラ3ランを放ったことも印象深い。来季こそは、チームを頂点に導く一打に期待したいところだ。
千葉ロッテマリーンズ
5位に甘んじ、チーム打率.231もリーグ5位。
ブランドン・レアード、
レオネス・マーティンの両助っ人の不振で打線が低調だった今季だが、それでもシーズン501得点はリーグ3位の数字を残せたのは、何も攻撃は強打だけではないからだ。機動力を駆使するマリーンズ野球を体現したのが、高部瑛斗。
荻野貴司が開幕に間に合わない中で、俊足巧打を発揮して一番打者として躍動し、荻野の復帰後は二番に座って、多彩な攻撃を演出した。果敢に次塁を狙う走塁に、盗塁もリーグ断トツの44の成功。俊足を生かした外野守備でも大飛球を幾度も好捕と存在感を示し続けた。
安田尚憲、
山口航輝の中軸がさらに力をつければ、チャンスメーカーの存在はより際立つ。来季以降への光を与える奮闘だった。
北海道日本ハムファイターズ

日本ハム・松本剛
9年ぶりの最下位に沈んだチームを明るい話題で照らした。2022年のMVPは、新庄野球下で才能を大きく開花させ、開幕からバットマンレースのトップを走ってきた松本剛で異論はないだろう。10年間で規定打席到達は1度のみの男が、打率.347をマークしてパ・リーグの首位打者に輝いた。左ヒザ骨折の試練も乗り越えて悲願のタイトル獲得。「思いきり行け」という指揮官の言葉に後押しされて、得点圏打率.419も12球団で断トツのトップだ。「無死二、三塁だったら最悪セカンドゴロ」という消極的思考が「ヒットを打とう」という意識に変化した。実際に走者二、三塁の場面での打率は.571と圧倒的勝負強さ。ここぞの場面で頼れる打者に飛躍した1年だった。
写真=BBM