「野球は今しかできない」

清原中・阿久津怜生は2015年夏、全中の400メートルで優勝した
2015年8月21日。
第42回全日本中学校陸上競技選手権大会(札幌市厚別公園陸上競技場)の400メートル決勝で優勝したのは清原中・阿久津怜生だった。
49秒22。
2位との差は0.20差。中学日本一の表彰台では誇らしく、阿久津はポーズを見せている。
小学校時代は野球を志すも、故障により、中学では陸上部に在籍。故障が癒えた宇都宮高(栃木)では再び、野球部に入部した。
現役で合格した東大では体力不足を理由に、野球部への入部を断念。アメフト部の門をたたき、ポジションはRB。1年間はトレーニングに時間を割き、60キロから15キロ増。2年春から試合出場の機会をうかがっていたが、コロナ禍により、大会は相次いで中止。
この間、神宮で東京六大学を観戦するうち、野球への思いが再燃。フィジカル面の不安もなくなり2年生の8月、野球部に転部した。
3年春に外野手のレギュラーを獲得すると、同春にはリーグトップタイの6盗塁をマーク。4年春にはリーグ戦初本塁打を放ち、今秋は2本塁打。身体能力の高さを武器に、課題の打撃技術がアップしており、急成長中だ。
「実力は足りない部分はありますが、野球は今しかできない」
阿久津は自らの可能性にかけるため、プロ志望届を提出。10月20日のドラフトを待つ。宇都宮高の同級生で当時、主将を務めた京大・
愛澤祐亮もプロ志望届を提出。阿久津は「こうして野球に戻ったのは、愛澤が京大で活躍していた影響が大きかったんです。本当に感謝しています」と語る。
中学3年時の思い出を聞くと、阿久津は答えた。
「(高校で)陸上の強豪校からの勧誘? ボチボチありました。今もこうして全中の話題を出していただけるので、振り返れば良かったな、と思います」
陸上競技、アメフト、野球といずれも第一線で活躍してきたポテンシャルを、プロはどう評価するか、注目である。異次元の脚力は、貴重な戦力になるはずだ。
文=岡本朋祐 写真=BBM