今季はピッチングコーディネーター

新しくロッテの指揮官となった吉井監督
ロッテ・
吉井理人新監督の就任が発表されたのは今月7日。
井口資仁前監督が5位に低迷した責任を取って電撃辞任を表明した中、球団フロントは今季ピッチングコーディネーターを務めた名コーチに白羽の矢を立てた。
吉井監督が来春のWBCまで侍ジャパンの投手コーチを務める意向を明かしたことも、話題になった。決勝ラウンドまで進めば、開幕直前の3月21日までチームを離れる異例の状況だが、メジャーからエンゼルス・
大谷翔平、パドレス・
ダルビッシュ有らかつての教え子たちが選出される可能性がある。その手腕は侍ジャパンに必要だ。
今月10日から宮崎のフェ
ニックス・リーグを視察し、多忙な日々が続くが、新たな挑戦はやりがいに満ちている。8日に自身のブログを更新。「先日、マリーンズから監督のオファーがあり、受けることにしました。突然のことで驚きましたが、大変、光栄に思います。これまではコーチングを極めようと努力してきましたが、今度は全体を見るマネジメントが仕事になります。監督としては新米ですが、基本的にはやることは同じと思っています。選手のパフォーマンスと人間力を上げること。そして、勝てるチームを作ること。10月の大舞台に立つことを目指していきます。なお、球団からは侍Jのほうもしっかりやるようにと言われています。こっちも、世界1になれるよう、全力で頑張ります」と誓った。
信念があった異例の育成方針
現役時代は日米7球団を渡り歩き、通算121勝をマーク。現役引退後はコーチとして
日本ハム、
ソフトバンク、ロッテを渡り歩き、57歳の現在までユニフォームを着ていない期間は13、14年の2年間のみ。
仰木彬、
野村克也ら名将の下でプレーした経験に加え、卓越した野球理論に定評がある。筑波大学大学院の人間総合科学研究科修士課程・スポーツ健康システムマネジメント専攻で野球の指導理論などを研究し、修士号を取得。個々の選手の能力に合わせた指導法に定評がある。
その代表例と言えるのが、
佐々木朗希だろう。入団時に投手コーチを務め、1年目の2019年は一軍に帯同して体力作りに専念させた。一、二軍通じて登板なしに「過保護すぎる」と批判の声が上がったが、異例の育成方針には信念があった。故障のリスクを未然に防ぎ、段階を踏んで育てる。3年目の今季は4月10日の
オリックス戦(ZOZOマリン)で28年ぶり史上16人目の完全試合を達成。プロ野球新記録の13者連続三振、日本タイ記録の19奪三振を樹立した。シーズンを通じて自己最多の9勝をマーク。怪物を覚醒に導いた吉井監督の手腕を忘れてはいけない。
投手を中心とした守りのチーム
監督を務めるのは初めてだが、投手を中心にした守りのチームを構築することが予想される。今季はリーグワーストの536失点。セットアッパーの
佐々木千隼が23試合登板で防御率6.39と成績を落とし、守護神・
益田直也も防御率3.29と安定感を欠き、シーズン終盤は
ロベルト・オスナが抑えを務めた。生命線の救援陣を再整備するとともに、先発陣もどのような体制になるか注目される。佐々木朗、
美馬学、
小島和哉、
二木康太、
岩下大輝、
種市篤暉のほか、
本前郁也、
佐藤奨真、
鈴木昭汰、
森遼大朗、
河村説人ら好素材がそろっている。
スポーツ紙記者は「吉井監督が温めていたプランもあるでしょう。投手の適性を考えて意外な配置転換を敢行するかもしれない。投手王国を作れる可能性は十分にあると思います」と期待を込める。
昨年3月に策定した「千葉ロッテマリーンズ 理念」では、25年までに常勝軍団といわれるチームを目指す中長期的なビジョンを掲げている。吉井監督がどう進化させるか、楽しみだ。
写真=BBM