今年のドラフト会議は10月20日に行われるが、各球団がどの逸材の交渉権を手に入れるか注目される。ただ、ドラフトが成功したかどうかは、年月が経ってから分かるものだ。今から10年前、2012年秋に行われたドラフト会議では1位で藤浪晋太郎、東浜巨に人気が集中。果たして、パ・リーグ6球団の「2012年ドラフト」の成功度は――。 北海道日本ハムファイターズ

エンゼルス・大谷翔平[写真=Getty Images]
球団史に残るドラフトとなった。メジャー挑戦を表明していた花巻東高の大谷翔平を強行指名。指名された当初は「気持ちは変わらない」とメジャー一本の姿勢を見せていた大谷を、
栗山英樹監督らが5度の入団交渉により説得して大逆転の入団にこぎ着けた。大谷の二刀流成功は、今ドラフトで1位指名を公表している
矢澤宏太しかり、二刀流育成のイメージを根付かせた効果も絶大だ。1位は大成功だが、2位以下6選手を見ると現役は3位の
鍵谷陽平のみ。大谷とともに1年目から開幕一軍入りしてリリーフで活躍、19年途中にトレードで
巨人移籍後も中継ぎとしてフル回転している。ほか5選手はすでに全員引退し、プロ野球人生は短命に終わった。
福岡ソフトバンクホークス
支配下、育成10人が入団するも、今季を現役で迎えたのは3人。ただ、その3人にとっては明暗が分かれるシーズンとなった。1位入団の東浜巨は、ここ数年、右肩痛の影響もあってなかなか力を発揮することができずにいたが、今季に向けてはしっかりと自分の体と向き合ってきた。ベストな状態で開幕を迎えると、大きな離脱をすることなくシーズンを戦い抜き、5年ぶりの2ケタ10勝に到達。5月11日の
西武戦(PayPayドーム)ではノーヒットノーランも達成している。来季に向けては新しいチャレンジも口にし、頼もしさは増すばかりだ。一方で、内野のユーティリティーとして万能な働きを見せてきた3位入団の
高田知季、「右打ちの
柳田悠岐=“ミギータ”」として今季も二軍では3割を超える打率を残した4位入団の
真砂勇介は、シーズン終了後の10月17日に球団から来季契約を結ばない旨の発表が。高田は今後について熟考、真砂は現役続行の意思を示している。
千葉ロッテマリーンズ
藤浪晋太郎を抽選で外し、再び重複した左腕・
松永昂大を1位で獲得。1年目から2019年まで7年連続40試合登板以上と救援左腕として奮闘も、20年に左ヒジを痛めると、21年は左肩の蓄積疲労の影響もあって一、二軍で登板なし。今季は育成契約となり7月に再び支配下登録されたが、現役引退を表明した。2位の左腕・
川満寛弥は一軍登板なく16年に戦力外となり、4位の
加藤翔平は俊足巧打で存在感を示すも、21年途中にトレードで
中日へ。近年、苦しんでいるのが3位の田村龍弘だ。入団から徐々にスタメンマスクを増やし、15年から正捕手となるも、19年から故障もあって出場機会が減。今季は高卒ドライチの
松川虎生の加入で、わずか2試合の出場に。一時代はチームを支えたが、10年経った現在ではやや寂しいドラフトの結果になっている。
埼玉西武ライオンズ
2012年のドラフトでは1位1巡目で
DeNA、ソフトバンクと東浜巨を競合したがクジを外して逃してまった。2巡目入札は
広島と増田達至を競合。“2度目の正直”で見事に即戦力右腕を引き当てた。増田は入団後、リリーフとして真価を発揮。3年目の2015年には40ホールドで最優秀中継ぎに輝き、翌年は開幕直後にクローザーに。20年には33セーブを挙げてセーブ王を獲得し、今季は史上18人目の通算150セーブを記録した。この年のドラフトではほかに
相内誠(2位)、
金子侑司(3位)、
高橋朋己(4位)、
佐藤勇(5位)、そして育成では
水口大地を指名。金子は3度盗塁王を手に入れ、高橋は実働期間が短かったがリリーフ左腕としてチームの勝利に貢献した。その他、3人はすでに現役を退いているが、そこそこ成功したドラフトと言える。
オリックス・バファローズ
藤浪晋太郎、松永昂大を抽選で外して
松葉貴大を1位で獲得。2位以下は
佐藤峻一、伏見寅威、
武田健吾、
森本将太、
戸田亮と、大卒、高卒に投手・野手とバランス良く指名した。松葉は1年目から先発ローテーションに入り、2年目以降も先発左腕として奮闘。ただ、なかなか勝ち星がつかず、18年はファーム暮らしが続き、19年途中に中日へ。武田健吾も松葉とともに19年途中に中日に移籍と主戦力とならなかった中でチームの中心となったのが伏見寅威だ。強打を武器に代打要員としても存在感を示し、
中嶋聡監督となった20年から徐々にスタメンマスクも増。
若月健矢との併用で昨季、今季とチームをリーグ連覇に導いた。大成功のドラフトとは言えないが、今や欠かせぬ扇の要に育っただけでも、上々のドラフトだったと言えるだろう。
東北楽天ゴールデンイーグルス
このドラフトで入団したのは支配下6人、育成1人で、現在残っているのは1位で現在は育成の
森雄大と、2位・則本昂大の2人のみ。それでも、則本一人の存在だけで成功のドラフトだったと言えるだろう。ルーキーイヤーの2013年に開幕投手に抜擢されると、エース・
田中将大に次ぐ15勝をマークして球団初のリーグ優勝、日本一に大きく貢献。14年から5年連続で最多奪三振のタイトルを手にするなど、エースの座へと駆け上がった。今季は2年連続2ケタとなる10勝(8敗)を挙げたが、夏場には自身5連敗を喫するなどスランプも経験。もう一度、エースとしての圧倒的な投球を取り戻したい。
写真=BBM