忘れない夏の悔しさ

広陵高・中井哲之監督は明治神宮大会で初戦突破を遂げ2度にわたり「感謝」を口にした
2022年7月20日。
広陵高はこの日の無念を、絶対に忘れない。
昨年11月の明治神宮大会準優勝校で、センバツでは2回戦進出。春の
広島県大会を制し、中国大会準優勝と着実に力をつけていた。昨夏の広島大会は県代表の「大本命」も、英数学館高との3回戦で敗退(1対2)した。
中井哲之監督は昨夏を回顧する。
「それが、悔しくて……悔しくて……。3年生に申し訳なくて……。その一心。(2年生以下が)本気で取り組んでくれたので、県大会(優勝)、中国大会(優勝)につながっている」
新チームは中国地区代表として、2年連続で明治神宮大会出場。東海大菅生高(東京)との2回戦(11月19日)を6対2で快勝し、準決勝進出を決めた。
広陵高校野球部に「引退」の二文字はない。夏の敗退が一区切りではなく、最上級生は翌年3月の卒業式まで、後輩たちと一緒に汗を流す伝統がある。卒業後、大学などで野球を継続する選手が多い。新たなステージで早くから活躍できるケースが多いのも、こうした引退後の充実した時間の過ごし方が背景にある。3年生たちは夏以降、例年以上に熱く後輩たちの取り組みを見守った。
「3年生が練習の手伝いをしてくれているので、3年生に感謝したいと思います」
中井監督は素直な気持ちを口にした。そして、2年生以下にも「思い」を言葉にしている。
東海大菅生高との2回戦では三番の主砲・
真鍋慧(2年)が、5対2の7回に貴重な追加点となる豪快なソロアーチを右翼席に放った。
「夏、負けたときに(真鍋は)四番を打っていたんですが、悔しい思いをしたので……。ずっと、小林(隼翔、2年)とともに頑張って、引っ張ってくれたことを感謝しています。(先発の)倉重(聡、2年)もよく投げてくれたと思います(8回2失点)」
屈辱の敗戦を糧に、這い上がってきた広陵高。勝利後の記者会見で指揮官は2度、選手たちに「感謝」を述べた。広陵高野球部のモットーは「ありがとう」。2年生以下も、3年生の献身的な姿勢に恩義がある。真鍋は言った。
「神宮の悔しさは、神宮でしか返せない」
広陵高は昨年11月の明治神宮大会決勝で大阪桐蔭高に敗退(7対11)した。まずは「秋日本一」の報告をし、出場が有力視される来春のセンバツへ弾みをつけたいところだ。
しかし、そこも通過点。真鍋の言葉を借りれば「夏の悔しさは、夏でしか返せない」。広陵高のリベンジマッチは、来夏まで続いていく。
文=岡本朋祐 写真=菅原淳