近鉄では2年連続で本塁打王にも

　助っ人では珍しいトレードでの移籍を経験し、所属した3チームすべてで活躍したレオン・リーについては紹介したばかりだが、プロ野球での10年のキャリアでリーグ優勝は1度もなし。最初に在籍したロッテでは、前後期制を採用していた当時のパ・リーグで、3年目の1980年に自身の本塁打で前期優勝を決めたのみだった。だが、プレーオフで近鉄に敗れて、パ・リーグの覇者は近鉄に。その近鉄にいた助っ人のチャーリー・マニエルも、トレードで移籍した貴重な助っ人の１人だった。

“赤鬼”の異名もあったマニエルは76年にヤクルト入団。メジャーでは通算4本塁打で、来日1年目も11本塁打にとどまったが、2年目の77年に42本塁打と爆発。翌78年には39本塁打を放って、ヤクルト初のリーグ優勝に貢献した。阪急(現在のオリックス)との日本シリーズでも3本塁打。3本目は第7戦(後楽園)、阪急の上田利治監督による1時間19分におよぶ抗議が終わり、代わったばかりの松本正志から打ったものだった。だが、足が遅く、守備に不安があったことから、オフに広岡達朗監督の構想から外れる。内野手の永尾泰憲とともに2対3のトレードで近鉄へ移籍することとなった。


　パ・リーグは75年から指名打者制を採用していたため、近鉄で守備の不安が消え、西本幸雄監督と気が合ったこともあり、いきなり打ちまくって前期優勝の原動力に。6月には死球をアゴに受けて骨折、離脱したが、わずか29試合の欠場だけでフェースギアを装着して復帰、シーズン通算37本塁打を積み上げた。近鉄はプレーオフで後期を制した阪急を下し、初のリーグ優勝。MVPに輝いたマニエルは2年連続、2チームにまたがり、両チームの初優勝に寄与したことになる。

　マニエルは翌80年に自己最多の48本塁打を放つが、その48本目が飛び出した試合で近鉄は後期優勝を決める。ロッテとのプレーオフでは意表をついてスクイズを決める場面もあった。だが、近鉄は日本シリーズでは2年連続で広島に苦杯。オフに契約で折り合わなかったマニエルは自由契約となり、ヤクルトへ復帰するも精彩を欠いて、1年で退団している。

文＝犬企画マンホール　写真＝BBM