侍ジャパンにかける強い思い

WBC本番を前にして打撃好調な岡本
破壊力十分の侍ジャパン打線。「メジャー3人組」のプラスアルファが計り知れないことを、強化試合で証明した。
大谷翔平(エンゼルス)、
ラーズ・ヌートバー(カージナルス)、
吉田正尚(レッドソックス)が侍ジャパンに合流し、初の実戦出場となった3月6日の
阪神戦(京セラドーム)。「三番・DH」でスタメン出場した大谷が2打席連続3ランで6打点と大活躍すると、「一番・中堅」に入ったヌートバーも2安打とチャンスメークした。「五番・左翼」の吉田も5回に左越え適時二塁打を放つ活躍で、3人でチームの全8得点を叩き出した。
7日の
オリックス戦(京セラドーム)では
村上宗隆(
ヤクルト)に代わり、「四番・左翼」で出場した吉田が猛打賞4打点の大暴れ。初回に先制の右前適時打、4点リードの2回も二死満塁の好機で左中間に走者一掃の適時三塁打を放った。「六番・三塁」に入った村上も初回に左中間3ランを放っており、WBC本戦もこのオーダーで戦う可能性が高い。
実戦で快音が聞かれなかった
山川穂高(
西武)も途中出場した7日の同戦で、8回に左越えソロを放つなど2打数2安打1四球と復調の兆しを見せている。本戦に向けて明るい材料が多い中、最もアピールした選手は
岡本和真(
巨人)ではないだろうか。侍ジャパンの実戦6試合で20打数7安打、打率.350、1本塁打、6打点。本職の三塁には村上がいるため、一塁に入るが守備能力が高い。チーム事情で左翼に入るときもあった。
スポーツ紙記者は、「岡本は2021年の東京五輪に出場していないし、不思議と侍ジャパンに縁がなかった。今回のWBCも選出は当落線上と見られていたが、選ばれると自らの希望で外野に入るなど侍ジャパンにかける強い思いを感じます。複数のポジションを守れるため、試合途中の勝負どころで出すジョーカー的な役割が考えられたと思いますが、これだけの活躍を見せたらスタメンで使わないのがもったいない。山川が打撃で上向いていることをアピールしましたが、状況判断に応じた打撃ができる岡本のほうが、つなぎ役に徹することができる。四番・吉田、六番・村上をつなぐ五番がしっくりくると思います」と評価する。
長距離砲として大きな魅力
覇権奪回に、シンデレラボーイの存在は欠かせない。連覇を飾った09年のWBCで輝いたのが
内川聖一だった。「六番・左翼」でスタメン出場した決勝の韓国戦では猛打賞の活躍。先頭打者で登場した延長10回に右前打で出塁すると、
イチローの中前2点適時打で決勝点のホームを踏んだ。本職は内野だが、外野の守備でもチームを救った。同点に追いつかれた5回に左翼を襲う打球にショートバウンドでスライディングキャッチ。好返球で打者走者を二塁でアウトにした。
内川は週刊ベースボールのインタビューで、「今でもイチローさんが最後に打った場面を覚えている子どもたちが多いんです。『イチローさんが打った場面を観たことあるよね? あの場面で、サードランナーが内川選手だったんだよ』って子どもたちの前で言うと、『うわー!』ってなりますから(笑)。皆さんの印象に残る場面に絡めて、最高の喜びを味わわせてもらった。優勝の瞬間、外野を守った青木(
青木宣親、ヤクルト)さん、イチローさんと二塁付近で抱き合って。興奮し過ぎて記憶が飛んでるんですよね。それぐらいうれしかった」と振り返っている。
大谷、吉田、村上が注目されるが、岡本も巨人の右打者で史上初の5年連続30本塁打をマークするなど長距離砲として大きな魅力を秘めている。日の丸を背負い、WBCの大舞台で輝けるか。
写真=BBM