感無量の甲子園

東北高・五十嵐校長は一塁アルプス席で大声援を送った
【2023センバツ】
3月18日
山梨学院[山梨]3-1東北[宮城]
センバツ高校野球大会が3月18日、
阪神甲子園球場で開幕した。4年ぶりに声を出しての応援が認められている。
「よーし! よーし!」
「いいぞ!」
「ナイスボール!」
東北高と山梨学院高の開幕試合。一塁側アルプス席で1球ごとにナインを後押しする声援を送っていたのは、東北高・五十嵐征彦校長(47歳)だ。ピンチを脱すれば、立ち上がってガッツポーズ。大会前に作成してもらったというタテジマのユニフォームが良く似合う。
「選手と同じ気持ちで戦っている」
母校・東北高の監督として3回の甲子園出場へ導いた。東北高の前回センバツ出場は、五十嵐校長が率いた東日本大震災発生直後の2011年。大垣日大高(岐阜)との1回戦で敗退も、全力プレーは大きな感動を呼んだ。17年に校長に就任し、12年ぶりの球春の舞台。
「感無量。生徒たちに、連れてきてもらいました。どういう立場であっても、甲子園に出場させていただいたことに感謝しています。甲子園は子どもたちのあこがれの場所ですし、私たちにとっても聖地です」
イニング間にはアルプススタンドを動き回り、関係各所にあいさつ。吹奏楽部、チアリーダーら一般生徒にも、気さくに声をかけていたのが印象的。野球部OBら一人ひとりに笑顔で対応し、真摯な人柄が随所に出ていた。
山梨学院高との1回戦は1対3で敗退。
ダルビッシュ有(現パドレス)を擁した2004年春以来のセンバツ勝利はならなかった。
昨夏の甲子園では宮城県のライバル・仙台育英高が東北勢悲願の初優勝を遂げた。五十嵐校長は言う。
「同じ宮城で切磋琢磨してきた歴史があります。私たちから見ても、良いお手本。私たちも、もちろん、そこ(全国制覇)を目指している。当然、悔しさもある。次はウチだ! という気持ちです」
五十嵐校長は学校を動かすポジションになっても、熱血ぶりは指導者時代と何ら変わらない。夏の甲子園出場は、2016年が最後。生徒ファースト。五十嵐校長が強力バックアップする東北高の挑戦は続く。
文=岡本朋祐 写真=BBM