オープン戦で好投

今季で高卒3年目を迎えた山下。スケールの大きな右腕だ
「積んでいるエンジンが違う」
他球団のスコアラーが評する右腕が、
オリックスの3年目右腕・
山下舜平大だ。
プロ2年間で一軍登板なし。昨季は腰の成長痛などでウエスタン・リーグでも8試合登板にとどまった。オフに両足首の手術を受け、春季キャンプも慎重に調整していた。そして、オープン戦初登板となった3月4日の
阪神戦(甲子園)。気温14度という肌寒い気候にもかかわらず、身長190センチの長身から投げ下ろした直球は自己最速の158キロを計測した。10日の
巨人戦(京セラドーム)でも、好投でアピール。直球は常時155キロ以上を記録し、カーブや新球のフォークに巨人打線のバットが空を切る。4回途中まで1安打無失点。予定の50球を超えたためイニング途中で降板したが、毎回の5三振を奪った。
17日の
広島戦(シティ信金スタジアム)でも、5回二死まで投げて毎回10奪三振の快投。初回に
西川龍馬に適時打を浴び、4回にも
マット・デビッドソンにソロを被弾と修正しなければいけない点があったが、5者連続三振を奪うなどフォークが冴えわたった。
「直球が速くて重い。まだまだ成長段階なので球速は出るでしょう。体格、球質を見るとエンゼルスの
大谷翔平に近い。直球だけなら何とかバットに当てられるかもしれないが、フォーク、カーブが入ると連打は厳しい。体力的に先発ローテーションでフル稼働はできないと思いますが、間違いなく難敵になる。大ブレークする可能性を秘めた投手だと思います」(他球団のスコアラー)
逸材ぞろいのドラフト
福岡大大濠高では八木啓伸監督の助言もあり、変化球はカーブのみ。先を見据え、直球とカーブを磨いた。2020年のドラフトで、オリックスが
佐藤輝明の「外れ1位」で山下を指名。この年は4球団が競合した佐藤以外にも、
栗林良吏(広島)、
伊藤大海(
日本ハム)、
早川隆久(
楽天)、
高橋宏斗(
中日)、
木澤尚文(
ヤクルト)、
入江大生(
DeNA)、2位以下でも
牧秀悟(DeNA)、
伊藤将司(阪神)、
中野拓夢(阪神)と逸材ぞろいのドラフトとなった。
同年のドラフトで高校生の投手で1位指名は高橋宏と山下のみ。将来のエースと嘱望される右腕は、順調にステップアップしている。1年目の21年は体力づくりに時間を割き、線が細かった体格は肉厚になってたくましくなった。昨年は一軍登板なしに終わったが、クライマックスシリーズ、日本シリーズでベンチ入り。出番はなかったが、26年ぶりの日本一を味わうなど貴重な経験をした。
直球へのこだわり

150キロを超える直球は威力十分だ
オリックスにはお手本になる投手たちがたくさんいる。同じ高卒から球界を代表する投手に変貌した
山本由伸、
宮城大弥、昨年セットアッパーで大活躍した
宇田川優希、
山崎颯一郎もWBCを戦う侍ジャパンに選出された。
山下が掲げる目標がNPB最速の165キロ。1年目の21年8月に、週刊ベースボールのインタビューで直球へのこだわりについて語っている。
「スピードは出て困ることはないと思っているので(球速は)伸びるだけ伸ばしたい。でも、試合中はスピードよりも、どう使えるか。ストレートでカウントが取れると、かなり大きいなって思うんです。ファウルを取れたり、空振りを取れたり。そのためには、ゾーンで勝負できるストレートを投げていく必要がある。それが目指す真っすぐです」
昨年は同期入団の高橋宏が一軍デビューを飾り、19試合登板で6勝7敗、防御率2.47をマーク。WBCで侍ジャパンのメンバーに選出されるなど大きく飛躍している。素材では山下も負けていない。才能を開花させれば、リーグ3連覇にグッと近づく。
写真=BBM