吉田監督から「手伝ってくれないか?」

山梨学院高・北村育成部長は同校OB。母校のために尽力している
2023年4月1日。人生忘れることのない日になる。
山梨学院高野球部の・北村開育成部長は一塁アルプス席で新社会人らしく、ハキハキとした口調で語った。
「今日から保健体育科の教諭として勤務させていただきます。学校、野球部のために、尽力していきたいと思います」
教員生活初日を、甲子園で迎えた。しかも、春夏を通じて山梨県勢初の決勝である。
「私はOBでもありますし、うれしく思います。このチームはまとまり、勢いがある」
山梨県南都留郡富士河口湖町出身。中学時代は富士河口湖シニアでプレーした。山梨学院・吉田洸二監督と同チームとのつながりで、同校へ進学した。3年夏(2018年)、第100回大会の甲子園。北村育成部長は背番号14(内野手の控え)でベンチ入り。左腕・
垣越建伸(現
中日)と同級生だった。
高知商高との1回戦敗退(12対14)後、北村育成部長は、吉田監督から「手伝ってくれないか?」とコーチの打診を受けた。高校野球引退後の9月、新チームから指導の道に入った。卒業後、山梨学院大に在籍した4年間も、母校のために汗を流した。大学卒業後の4月1日、母校に教員として採用となった。
山梨学院高は報徳学園高を7対3で下し、初優勝を遂げた。13年に就任した吉田監督は清峰高(長崎)を率いた09年に続き、2校で甲子園制覇は史上4人目の快挙である。
さらなる成長を追い求めて
大会を通じて、集中打が目立った。広陵高との準決勝では1対1の9回表に一挙5得点。決勝も0対2の5回裏に打者10人の7得点で逆転し、主導権を握った。試合後の場内インタビューで集中打の要因を問われた際、吉田監督は「練習のほうは、スタッフが中心。若いスタッフが力を合わせて、活気ある練習を続けてもらっている。それが、連打につながった」と、労いの言葉を残している。
「若いスタッフ」とは寮監などを務める山下由起コーチ(27歳)、吉田監督の長男・健人部長(26歳)、北村育成部長(22歳)を指す。指揮官を支える指導体制の充実が、センバツ初優勝へとつながったのは言うまでもない。
北村育成部長は言う。
「吉田監督は大らかに見えますが、実は勝負師。一つのことを極める姿勢は、人にはない情熱があります。部長に練習のほとんどを任せ、監督はどっしり見ている。生徒たちへの心のケアなど、細部まで目が行き届いている」
指導者4人が3つの寮に分かれ、生徒と寝食をともにしている。24時間指導の山梨学院高は野球人である前に、高校生として人間性を高めるのがポリシー。北村育成部長も「春日本一」に満足することなく、足元を見つめ、生徒とともにさらなる成長を追い求めていく。
文=岡本朋祐 写真=BBM