「国立大なのに強い印象」

筑波大・生島は福岡県屈指の進学校・福岡高出身で、文武両道を貫いてきた
【4月22日】一部リーグ戦
筑波大10-9桜美林大
(筑波大1勝)
首都大学リーグ第4週1日目。前週まで2勝3敗(勝ち点0、東海大3回戦が未消化)の筑波大は、4勝1敗で勝ち点2の桜美林大との1回戦に臨んだ。
この試合も終盤までリードを許す展開となったが、6点を追う9回表。6四死球に2本の長短打を絡めて一挙7点の大逆転。そのまま10対9で逃げ切り、貴重な白星を挙げた。
劇的な勝利に沸いた筑波大の中軸として役割を果たしているのが三番・三塁の生島光貴(4年・福岡県立福岡高)だ。
生島は福岡県屈指の進学校・福岡高校出身。高校時代の監督の勧めで筑波大を志した。
「当時の筑波大には
篠原涼選手(ENEOS)、
加藤三範投手(ENEOS)、
佐藤隼輔投手(
西武)が在籍していて、国立大学なのに強い印象があり、このチームで自分もやってみたいと思ったんです」
一浪の末に筑波大に入学。最初の2年間はリーグ戦に出場することができなかったが「(同じ境遇の選手も)みんな腐ることなく頑張っていました。自分も結果が出ていなかったのですが、できることをコツコツと積み重ねていきました」と振り返る。指導にあたっている川村卓監督は「生島は走攻守がそろっていたので、その能力を磨いていければと思っていましたが、学年が上がるとともに上達してくれています」と評価する。
3年春にリーグ戦デビューを果たすと好調な打撃で先発に定着すると、打率.387でリーグ3位の好成績を残した。同年秋も3割をマークすると、昨年12月には侍ジャパン大学代表の強化合宿に招集される。
「代表の合宿に呼ばれるなんて初めてのことだったので、最初に聞いたときは本当に驚きました。ただ、選ばれたからには頑張ろうと思っていました」
紅白戦では
上田大河(大商大)からタイムリーを放つなど、得意のバッティングでアピールした生島。合宿では得るものが多かった。
「自分の通じるところと足りないところが分かったのですが、特に150キロを超えるストレートをとらえきれなかったので、それが課題となりました」
ゼミでは体育心理学を専攻
チームに戻ってからは、課題克服のためにフォームを改善。「川村監督に動作を解析してもらったところ、打ちにいくときに頭が後ろへ下がってしまうことが分かったんです。体重移動のときのこの無駄な動きがバットが遅れてしまう原因になっていたので修正。ただ、この動きは自分のなかで『タメ』を作っていた部分でもあったので、丁度良い塩梅を見つけるためにこの冬はバットを振ってきました」。
成果はすでに表れている。開幕カードの東海大1回戦では1回表に決勝打となる先制打。第2週の明治学院大との2回戦では四番に座って2安打を記録するなど、ここまでの全5試合でヒットを重ねてきた。
好調が持続していることについて生島は「試合でバッティングが崩されることもありますが元の状態へ戻すため、試合後などにバットを振っています。ティーバッティングで『自分のポイントでボールを捉えられるか』など、いくつかチェックポイントがあるのですが、それを一つひとつ確認しています」と話す。
ゼミでは体育心理学を専攻しており「試合中のメンタルについて研究しています。ゲームではどうしても視野が狭くなりがちですが、間(ま)をうまく利用し、周りの景色などを見て視野を広くするように心掛け平常心を保つようにしています」と自分の感情を整えるのに役立てている。
桜美林大1回戦の第1打席はライト線へツーベース。第2打席もピッチャーを強襲するヒットを放つなど、チャンスメーカーとして躍動。この2安打で打率も.429(21打数9安打)に上昇した。そして、9回表の第5打席は死球を受け「自分が決めるというよりも、後ろへつないでいくのが筑波大の野球。カッコ悪くても、後続につなぐことができて良かったです」と逆転劇の一端を担った。
これでチームは今季3勝目。ただ、日程の都合もあって勝ち点はゼロとまだまだ気を抜けない状況にある。だが、「筑波大にはずば抜けた選手はいませんが、それぞれの長所を生かし、短所を補い合うチーム。これからもチームカラーである粘りを体現していきたい」と生島が話すように、しぶとく食らいつく野球で今シーズンも最後まで戦い抜く。
文=大平明 写真=BBM