打線を活性化させる活躍

秋広はこのまま巨人打線のラインアップに名を連ね続けることができるか
下位に低迷する巨人の救世主になれるか。プロ3年目の
秋広優人がチャンスをつかもうとしている。
「七番・左翼」でプロ初のスタメンデビューを飾った4月22日の
ヤクルト戦(神宮)。1点差を追いかける2回二死一塁で、
小川泰弘の直球を右中間へはじき返す適時二塁打。プロ初安打に塁上で笑顔を浮かべ、三塁ベンチも沸いた。この日はオフの自主トレを共に行い、師匠と慕う
中田翔の34歳の誕生日。プロ初安打&初打点と最高の形で恩返しを果たし、チームも逆転勝利を飾った。
「八番・左翼」でスタメン出場した翌23日の同戦でも、輝きを放った。1点リードの2回二死二塁でドラフト1位右腕・
吉村貢司郎のスライダーをはじき返し、一、二塁間を割る2試合連続の適時打。2点リードの4回二死一塁から左安打を放ち、プロ初のマルチ安打をマークすると、6回無死二、三塁の好機で3ボールから積極的に振り抜き、中犠飛。2安打2打点と打線を活性化する活躍で、チームも開幕カード以来、6カードぶりの勝ち越しを決めた。
他球団のスコアラーは「秋広は長打力が注目されますが、打撃が柔らかくバットコントロールにも長けている。器用な選手なんですよね。下位にああいう打者がいたら厄介ですよ。打者としての素質はピカ一。結果が出なくても起用し続ける価値がある選手だと思います」と評する。
「強く振ることを意識」
2021年に二松学舎大付高からドラフト5位で入団。日本人選手で歴代最長身の身長2メートルから振り抜く打球はピンポン玉のようにスタンドに消えていく。打撃のスケールは規格外だった。高卒1年目で春季キャンプの紅白戦で結果を残し、一軍に合流して話題に。シーズン終盤には代打で一軍デビューを飾った。秋広はシーズンオフに、週刊ベースボールのインタビューで自身の打撃スタイルについて以下のように語っている。
「高校時代に30本、40本とホームランを打っても、プロではアベレージヒッターになる方もいる。高校でどれだけ打っても、プロでそのままのスタイルで行けるか分からない。自分も高校時代を引きずるのは良くないし、大きいのを狙おうとは思っていなかったんです。プロのピッチャーを体感してみて、どうするか決めようと、割と冷静に考えていました」
「ただ、入団してすぐ、阿部監督(
阿部慎之助、当時二軍監督、現一軍コーチ)に、『難しいことは何も考えなくていいから、そのままのスタイルで』と言っていただきました。変化球、ボール球を振らされて崩されることもありましたけど、考え方の部分でアドバイスをいただいても、その後も自由に打たせてもらえたのはありがたかったです。一軍では、原(
原辰徳)監督にも『打撃練習のときからフルスイングをして、全部ホームランを狙うつもりで』と。今もフルスイング、強く振ることを意識していますけど、すべてのコーチにそう言われているので、このスタイルで勝負していこうと思っています」
背番号「55」を背負って
OBの
松井秀喜氏が背負った背番号「55」を継承した昨年は一軍出場が叶わなかったが、イースタンで109試合出場して打率.275、9本塁打、38打点。リーグ最多の98安打をマークした。今年は春季キャンプで一軍スタートだったが、実戦で18打数3安打、打率.167と結果を残せず、2月28日にファームに合流。悔しさを糧にバットを振り続けてきた。
本塁打だけでなく、確実性も高い打者へ――。目指す打撃スタイルは背番号「55」の先輩、松井氏と重なる。若手の台頭が望まれるチーム状況で、プロ3年目の20歳は大きく飛躍できるか。
写真=BBM