WBCの後遺症!?
チームをけん引する打撃を見せている中田
今年の打撃タイトル争いは混戦になりそうだ。セ・リーグは昨季、
ヤクルト・
村上宗隆が打率.318、56本塁打、134打点をマーク。22歳の最年少で三冠王を獲得し、本塁打の日本選手記録を樹立。ライバルの
巨人・
岡本和真は2位で30本塁打と大差をつけた。
今年も村上がタイトル争いで大本命と見られたが、打撃不振が深刻だ。3月30日の開幕・
広島戦(神宮)では初回の今季初打席で、
大瀬良大地のカーブをバックスクリーン左に運ぶ先制2ランと最高のスタートを切ったが、その後は相手バッテリーのマークが厳しくなったこともあり快音が聞かれなくなる。開幕24試合を終えて打率.148、2本塁打、10打点。リーグワーストの39三振と本調子に程遠い。
スポーツ紙デスクは、こう分析する。
「三冠王を獲得した昨年のシーズン終盤も調子を崩していました。侍ジャパンに選出された今年はWBCの決勝ラウンドで復調の兆しを見せたが、開幕後は甘い球をきっちり仕留める村上らしさが見えない。気になるのはボール球に手を出していることです。結果を出さなければいけないという焦りがあると思いますが、打撃のメカニズムが狂っているように感じます。誰もが認める強打者なのでちょっとしたきっかけを取り戻せば、本塁打を量産すると思うのですが……」
WBCの後遺症もささやかれるが、巨人の四番・岡本和真は24試合出場で打率.341、2本塁打、7打点と広角に安打を打ち続けている。打席での雰囲気を見ると、WBCで好結果を残したことが自信につながっている。本塁打は2本だが、これからペースを上げていくだろう。好不調の波が激しい課題を乗り越えれば、三冠王も視野に入ってくる。
勝負強い打撃を披露
本塁打王争いで、チャンスが十分にある選手がもう一人いる。巨人・
中田翔だ。目下リーグトップの6本塁打をマーク。29日の広島戦(東京ドーム)では1点差を追いかける9回二死一塁で
栗林良吏のフォークを左翼席に運ぶ逆転サヨナラ2ランを放った。自主トレを共に行う愛弟子の
秋広優人がプロ初アーチを放った試合で劇的な一打に、「打席に立つ前にアキ(秋広)に『手本を見せてやるから見とけ』と言って打席に立ったので、足が震えていました」とジョークを交え、「アキがすごくいいホームランを打ってくれたので負けるわけにはいかないと思いましたし、最後までファンの皆様が声援を送ってくれたので、すごく背中を押してくれた気持ちで打席に立てました」とファンへの感謝を口にした。
昨年の夏場に打撃フォーム改造へ踏み切り、追い込まれても右方向を意識した打球を打つことでヒットゾーンが広がった。ギリギリまでヘッドを返さず、ボールの内側を捉える打法でコンタクト率が向上。パワーも健在だ。甘く入った球はきっちりスタンドに叩き込む。109試合出場で打率.269、24本塁打、68打点をマークした。新たに3年契約を結んだ今季は春先からトップギアに入っている。開幕戦の
中日戦(東京ドーム)から2試合連続アーチを放つと、4月19日の
DeNA戦(佐賀)では3点リードの8回に、
ウェンデルケンの148キロ直球を左翼の芝生席最後方に運ぶ特大の5号ソロ。そして、チームを窮地から救う逆転サヨナラ6号と価値ある一打を打ち続け、岡本と共にポイントゲッターになっている。
本塁打のタイトルは過去になし
中田は
日本ハム在籍時に打点王を3度獲得している。初のタイトルを獲得した14年は打率.269、27本塁打、100打点をマーク。週刊ベースボールの当時のインタビューで、「納得できる数字ではないです。運よく、打点王を取れたのはみんなのおかげです。もっと打ちたかったのが本音ですね」、「ホームランにはもっとこだわっていきたいです。だから、27本という結果は悔しいですね」と語っていた。
侍ジャパンの四番でも活躍した和製大砲だが、本塁打王獲得は意外なことに一度もない。20年に自己最多の31本塁打を放ったが、タイトルを獲得した
楽天・
浅村栄斗の32本塁打に1本差で及ばなかった。プロ16年目の今季は大きなチャンスだ。中田が本塁打を積み重ねれば、3年ぶりの覇権奪回が見えてくる。
写真=BBM