背水の陣を迎えていた今季
5月4日のヤクルト戦で同点4号2ランを放つなど打撃の調子が上がっている坂本
この男が調子を上げてもらわなければ、チームも上昇気流に乗れない。
開幕から深刻な打撃不振が続いていた
巨人・
坂本勇人が復調の気配を見せている。5月4日のヤクルト戦(東京ドーム)で2点差を追いかける5回二死一塁で、
ディロン・ピーターズの134キロスライダーを左中間へ運ぶ4号同点2ラン。2点リードの6回二死満塁の好機では
大西広樹の150キロ直球を中前にはじき返す2点適時打で3試合連続マルチ安打。5日の同戦では途中出場で5回に右前適時打、7回に中越え二塁打を放って打率.247まで上昇した。
背水の陣を迎えていた。昨季は度重なる故障の影響で稼働できず、83試合出場で打率.286、5本塁打、33打点。シーズン規定打席到達が14年連続でストップした。今年はWBCに出場する侍ジャパンのメンバーに内定していたが、出場を辞退。シーズンに向けてコンディションを整えることに専念した。だが、オープン戦は14試合出場で打率.111、0本塁打、2打点。開幕後も22打席連続無安打と状態が上がらない。「不動の遊撃」の座は揺らいでいた。4試合連続スタメン落ちを経験するなど、打率.128まで低下。だが、代わりにスタメンに抜擢されたドラフト4位の
門脇誠、高卒4年目の
中山礼都がレギュラーを奪取するパフォーマンスを見せられない。
5試合ぶりにスタメン復帰した4月23日のヤクルト戦(神宮)でマルチ安打をマークすると、28日の
広島戦(東京ドーム)で今季初の1試合2本塁打を放つなど猛打賞4打点の活躍。七番で起用されていたが、30日の広島戦(東京ドーム)は三番に。5月に入ると4試合で月間打率533、1本塁打、6打点と好調をキープしている。
中田翔が4日のヤクルト戦(東京ドーム)で負傷交代し、右ふくらはぎ裏の肉離れで翌5日に登録抹消された。ポイントゲッターの戦線離脱により、坂本に掛かる期待はさらに大きくなっている。
「まだまだ老け込む年齢ではない」
球団OBの
堀内恒夫氏は坂本が苦しんでいた4月上旬に、週刊ベースボールのコラムで激励のメッセージを綴っていた。
「バッターは30歳を過ぎてから円熟味が増していくと言うじゃないか。あの長嶋さんだって、35歳のときに当時では日本プロ野球最多となる6度目の首位打者を獲得した。打撃の神様・
川上哲治さんの首位打者獲得数を超えたんだからね。
王貞治さんも50本塁打を記録して、最後に本塁打王に輝いたのは37歳のときだった。おまけに打点も124を叩き出して、本塁打と打点の2冠を獲得したくらいだからね」
「坂本は16年に打率.344と出塁率.433をマークして、セ・リーグでは遊撃手初の首位打者と最高出塁率を獲得してからタイトルには手が届いてないけど、まだまだ老け込む年齢ではないよ。現在でも坂本は
丸佳浩や
岡本和真とともに、チームの命運を左右する重要な選手であることは言うまでもない。それだけにもう一花咲かせて、長嶋さんや王さんのように巨人のスター選手として円熟味を増した姿を見せてもらわなければ困るんだよ」
打撃不振は衰えではない
34歳の坂本はまだまだ老け込む年ではない。他球団のスコアラーは「オープン戦、春先の打撃不振は衰えというより、打撃スタイルで迷っていたように感じられた。今は体の芯がブレず、状態が悪いときのオーバースイングでなくきっちり捉えられている。限界を指摘する声が少なくなかったですが、まだまだ替えの利かない選手です。坂本の調子が良いとチーム全体が乗ってくるので、抑えなければいけないポイントですね」と強調する。
V奪回に向け、坂本の活躍は不可欠だ。
写真=BBM