定岡正二氏、篠塚和典氏、川口和久氏、槙原寛己氏の書籍『昭和ドロップ!』が5月2日、ベースボール・マガジン社から発売されました。昭和に生まれ育ち、昭和、平成に輝いた4人が、巨人、長嶋茂雄、青春の多摩川ライフなど、あのころのプロ野球を愛あり笑いありでたっぷり語り合う1冊です! これは不定期で、その内容の一部を掲載していく連載。今回も書籍オリジナルで4人が集まったときの話です 「江川さんがプロより高校時代のほうが速かったっていうのはほんとかな」(川口)

『昭和ドロップ!』表紙
2023年1月某日、書籍取材用に4人に集まっていただいた『昭和ドロップ!』。最初のテーマは「夢のベストナイン」。今回は投手部門の2回目となる。
定岡 ベストナインは僕らなりの基準でいいんですよね。あまり昔の選手になると分からないので。
──もちろんです。
篠塚 俺は
江川卓さん(元巨人)にする。
槙原 江川さんも旬ですよね。僕もやってますけど、最近、プロ野球OBが次々とYouTubeを始めているじゃないですか。その中で、いろいろな人が江川さんがいかにすごかったかの話をしているんですよ。この2、3年で江川さんの評価が一段と上がっている気がします。
川口 今はG+やYouTubeで江川さんの全盛期のピッチングを見ることができるしね。特に1981年(巨人の日本一イヤーで、江川さんはシーズンMVP)は、映像のスピードガンの表示は140キロ台だけど、とてもそうは思えない。確かに手抜きっぽい球はあるにせよ(笑)、ここぞのときは150キロ台後半は間違いないと思う。何より球質だね。ボールが浮かび上がるように見える。でも、プロより、高校時代(作新学院高)のほうが速かったっていう伝説はほんとかな。
槙原 そう言っている人は多いですよね。甲子園で対戦した
達川光男さん(
広島商高-東洋大-広島)も絶賛していました。すごかったらしいです。
篠塚 僕も銚子商高時代に対戦しているけど、速かったよ。初対決はヒットだったけどね(篠塚さんが2学年下)。
定岡 さすがシノだ!
オリックスの話をしていたら、ラオウ(オリックスの
杉本裕太郎)を青学大時代に教えたとか、
村田兆治さん(元
ロッテ)が亡くなったら、最後の野球教室を一緒にやっていたとか、どんな話題を振っても、必ず接点があるんだよな。
川口 プロでは打席に立ったことがありますし、確かに江川さんはすごいと思ったけど、それより
西本聖さん(元巨人ほか)のシュートがえげつなかった。頭のところから、大きなカーブみたいにストライクゾーンに入ってきましたからね(西本さんは右腕、川口さんは左打席)。シュートってこんなに曲がるの! っていうくらいでした。俺は西本さんにしよう! 江川さん、西本さんはプロ入り前からあこがれの存在でしたしね。
定岡 俺が目の前にいるのに、江川、西本の話ばかりだな!
川口 サダさんも2人と同じ巨人を支えた先発三本柱ですもんね。でも、サダさんがすごかったのはスライダーだけじゃないですか(笑)。
定岡 おいおい、お前ももう少し先輩をリスペクトしろって!
篠塚 いいんじゃないですか。それが『昭和ドロップ!』だし(笑)。
定岡 じゃあ、打席に立って一番「うわあ!」って思ったピッチャーは誰だった?
槙原 「うわあ!」がなんだか分かりませんが(笑)、僕はいないですね。だって、ピッチャー相手に、みんな真剣に投げてこないから。
定岡 そりゃ、お前が打てないからだよ。俺には内角の厳しいとこにもちゃんと投げてきたよ。
槙原 サダさんと僕じゃ、そんなに打率は変わらないんじゃないですか。
──通算打率を見ると、定岡さんが.149、槙原さんが.107、川口さんが.161です。
定岡 ほら! 同じ1割台でも結構違うぞ。でもグッチが一番か。ちょっと悔しいな。
川口 打つのも好きでしたからね。3割近く打った年もありましたよ(1994年.293)。
定岡 また自慢入れてきたな(笑)。