クラッチヒッターとして大成へ

打撃フォームが固まり、安定した打撃を見せている安田
首位を走る
ロッテで覚醒の時を迎えようとしているのが、プロ6年目の
安田尚憲だ。
今季は広角にライナー性で外野の間を射抜く打球が目立つ。9本の二塁打はチームトップ。本塁打は4月25日の
西武戦(ZOZOマリン)で2号右越えソロを放って以来出ていなかったが、5月24日の西武戦(ZOZOマリン)で1カ月ぶりにアーチが2本飛び出した。初回二死一、二塁で
今井達也のスライダーを捉え、右中間中段に3ラン。さらに、3回無死一、三塁の好機で、150キロ速球を強く振り抜いた打球が左翼席前方のホームランラグーンへ。ZOZOマリンで逆方向のアーチは自身初だった。パワーだけでなく、技術で成長面を見せた2発で自己最多の6打点をマーク。「五番・三塁」に定着し、チームに不可欠な存在になりつつある。
他球団のスコアラーは、安田の打撃をこう分析する。
「昨年の後半から打撃フォームが固まってきた感じがする。同期入団の
村上宗隆(
ヤクルト)、
清宮幸太郎(
日本ハム)はホームランアーチストだが、安田はタイプが少し違う。ライナー性の打球が持ち味で打撃に柔らかさがある。目指す方向性としては打率3割、20本塁打、80打点のクラッチヒッターだと思います。村上、清宮に能力で劣っているわけではない。確実性を磨けばさらに進化していく雰囲気があります」
「東の清宮、西の安田」
履正社高で1年秋からレギュラーをつかみ、高校通算65本塁打をマーク。早実で歴代2位の高校通算111本塁打を記録した清宮と比較されることが多く、「東の清宮、西の安田」と称された。ドラフトでは清宮に7球団が競合。安田は村上と共に「外れ1位」で3球団が競合し、当たりクジを引き当てたロッテに入団する。
プロ3年目の20年に四番で87試合スタメン出場。
井口資仁前監督の期待は大きかったが、好不調の波が激しくレギュラーを完全につかむまでには至らなかった。昨年は119試合出場で打率.263、9本塁打、47打点をマーク。規定打席到達にあと3足りなかったが、いずれも自己最高の数字だった。
物足りなく感じるのは、安田が高い潜在能力を出し切れていると言えないからだろう。同期入団の村上は日本選手記録の56本塁打を樹立し、球界最年少の22歳で令和初の三冠王を獲得するなど球界を代表する強打者に。プロ入り以来伸び悩んでいた清宮も昨季は129試合出場で打率.219、18本塁打、55打点と長距離砲としての輝きを見せた。安田も突き抜ける活躍を見せてほしい――ロッテファンの願いだった。
ウサギのように飛び跳ねる飛躍の年に

18年ぶりのリーグ優勝へ中心打者として駆け抜ける
今季はオープン戦で打率.158と試行錯誤し、4月2日の開幕3戦目・
ソフトバンク戦(PayPayドーム)では1点差に迫った6回一死二、三塁の場面と一打逆転の場面で代打を送られた。期待を込めて起用してもらえる時期は過ぎた。その後に安打を積み重ねることで、首脳陣の信頼をつかんだ。
安田は新年の誓いで週刊ベースボールの取材に、「今年で6年目。三塁のレギュラーの座をつかんで、三塁手としてタイトルを獲りたいという目標を立てました。卯年なので、ウサギのように飛び跳ねるような飛躍の一年にしたいと思います」、「そろそろ、ガツンと皆さんの期待をはるかに超えるような成績を残したい。ベストナインとゴールデン・グラブの両方を獲れるような、最高の結果を残せるように頑張ります」と語っている。
カメのように一歩ずつ着実に歩を進めてきた安田が、ウサギのように飛び跳ねて大ブレークなるか。
吉井理人新監督率いるロッテの中心選手として、18年ぶりのリーグ優勝を目指す。
写真=BBM