チャンスをつかんだ若手野手

スケールの大きな打撃を見せている秋広
借金1で交流戦開幕を迎える
巨人。首位を快走する
阪神と9ゲーム差に開いたが、過渡期を迎えたチームで若手が頭角を現しているのが明るい材料だ。
選手層の厚い巨人で定位置を奪取するのは容易ではない。だが、スター選手たちも年を重ねてベテランの域に入っている。「88年世代」の
坂本勇人は打撃不振で春先にスタメンを外れ、「89年世代」の
菅野智之は右肘の違和感で開幕からファーム調整、
丸佳浩も打撃の状態に波がありスタメンを外れることが珍しくない。
中田翔も右太もも裏の肉離れで今月上旬に3週間の戦線離脱。
広島から無償トレードで5年ぶりに復帰した38歳の
長野久義も今月27日の阪神戦(甲子園)で7回に遊ゴロ併殺打を打った際、足がつって転倒。29日に登録抹消された。3月上旬に死球で右手親指骨折した
中島宏之、
ソフトバンクから加入した
松田宣浩の両ベテランもファーム調整が続いている。
実力主義の世界で、若手はチャンスを生かせばレギュラーをつかめる。その筆頭候補が高卒3年目の
秋広優人だ。開幕はファームで迎えたが、4月18日に一軍昇格すると。29日の広島戦(東京ドーム)で
松本竜也のカーブを振り抜き、右中間へプロ初アーチ。自慢の長打力だけでなく、状況に応じてコンタクトを重視した柔らかい打撃で広角に安打を積み重ねる。5月25日の
DeNA戦(東京ドーム)から三番で4試合連続スタメン出場。28日の阪神戦(甲子園)では、1点差を追いかける7回に
才木浩人のスライダーを弾丸ライナーで右翼席に運ぶ4号ソロ。浜風を切り裂く衝撃の一打に球場がどよめいた。29試合出場で打率.347、4本塁打、16打点。得点圏打率.526と驚異的な勝負強さを誇る。
ドラフト4位の
門脇誠も5月上旬から三塁のスタメンで起用されている。37試合出場で打率.162、1本塁打、6打点と打撃は試行錯誤を重ねているが、際立つのは三塁の守備力だ。守備範囲が広く、球際に強い。強肩で送球も安定していることからヒット性の打球を何本も内野ゴロにしている。本職が三塁の
岡本和真を一塁に回して、門脇を三塁で起用している状況が首脳陣の信頼度の高さを物語っている。
チームを盛り上げるイキのいい投手

ダイナミックなフォームが目を引く横川
投手陣は守護神・
大勢を筆頭に25歳以下のイキのいい投手が目立つ。
山崎伊織、
赤星優志、
横川凱、
直江大輔、
大江竜聖、
菊地大稀、
代木大和とズラリ。ドラフト3位の
田中千晴はセットアッパーで起用され、育成枠で入団した
松井颯も1年目から支配下昇格し、5月21日の
中日戦(東京ドーム)でプロ初勝利をマークした。
横川は大阪桐蔭高で
根尾昂(中日)、
藤原恭大(
ロッテ)、
柿木蓮(
日本ハム)と同世代。3年時に甲子園春夏連覇に貢献してドラフト4位で巨人に入団したが、2度の育成契約を経験するなど順風満帆ではなかった。同期でドラフト6位入団の
戸郷翔征がエースの座をつかむ状況に感じる部分はあっただろう。
昨年9月に週刊ベースボールのインタビューで、「もちろん、すごく刺激になります。寮にみんなで見ることができるテレビがあって、ちょうど夕食を食べる時間にナイターが放送しているので。ご飯を食べながら、同級生であったり同世代の選手たちがヒーローインタビューで話している姿を見ると、僕もいつか、いや、いつかではなく早く、絶対あそこに立ちたいという思いが強くなりますね」と語っている。
今季は先発ローテーションに定着し、4月23日の
ヤクルト戦(神宮)でプロ初勝利を挙げるなど8試合登板で3勝2敗、防御率2.40。安定した投球を続けている。
スポーツ紙デスクは、「巨人は投打で楽しみな若手が多い。ファームでも
堀田賢慎、左肘の違和感から復帰した
井上温大も将来先発の軸になれる素材です。野手陣も秋広の活躍を他の若手がどう感じるか。昨年一軍で活躍した
増田陸、ファームで結果を出して一軍昇格したドラフト2位の
萩尾匡也がレギュラー争いに食い込む存在感を示せば、チーム力が上がる」と期待を込める。
交流戦からの巻き返しへ。ヤングジャイアンツから何人の救世主が現れるか楽しみだ。
写真=BBM