デビューから9試合連続安打

一発長打を秘めた打撃が魅力の加藤豪
ベールに包まれていた実力は本物だった。アメリカからの「逆輸入」でドラフト3位入団した
加藤豪将。3月中旬に右腹斜筋肉離れで戦線離脱し、開幕一軍入りは叶わなかったが、5月25日の
ソフトバンク戦(エスコンF)で来日デビューすると、その活躍は目覚ましい。
5月31日の
ヤクルト戦(エスコンF)で、3回に
市川悠太の直球を振り抜いて右中間へNPB初アーチを放つと、5回にも市川のスライダーを完璧に捉え右中間へ2号。「すごい緊張しますね。野球のフィールドでこんなに緊張したことがないと思います。英語が出てきそうです」と笑った。
交流戦2カード目となった
巨人3連戦では1、2戦目で2試合連続アーチを放つと、3戦目はNPB初となる猛打賞の活躍。デビューから8試合連続安打は、ドラフト制以降の新人では2018年に樹立したチームメートの
清宮幸太郎の7試合連続を抜いてプロ野球最長記録。6月6日の
広島戦(エスコンF)でもマルチ安打をマークし、9試合連続安打に更新した。打率.417、4本塁打、7打点、1盗塁。
新庄剛志監督の信頼を勝ち取り、三番に定着している。
他球団のスコアラーは警戒を強める。
「バットを寝かせた構えで広いスタンスからコンパクトに振る。頭がブレないのでミート能力が高い上に、体幹も強いのでしょう。ボールを遠くへ飛ばす能力も高い。あれほど飛距離が出るのは驚きでした。想像以上にすごい打者だと思います。まだ日本野球に完全に順応しているわけではない。これからさらにパフォーマンスが上がる可能性があるので、対策が必要です」
指揮官の強い希望でドラフト指名
1994年生まれの28歳。米国で生まれ育ち、18歳のときにヤンキースからドラフト2巡目(全体66番目)で指名された。将来を嘱望されたが、メジャーで活躍できる選手は一握りの厳しい世界だ。ヤンキースでメジャー昇格はならず、マーリンズ、パドレスを渡り歩き、プロ10年目の昨年ブルージェイズでメジャーデビュー。8試合出場で打率.143の結果だった。その後、メッツに移籍してメジャー昇格したが出場機会がなく、3Aに降格。逆境の時間のほうが長かったかもしれない。この加藤豪に熱視線を送っていたのが、新庄監督だった。
指揮官の強い希望によりドラフト3位で指名。昨年11月に入団会見に同席した際は、「僕も(現役時代に)マイナー・リーグで経験をしてきたんですけど、移動の距離とかハングリー精神の塊。10年間マイナー・リーグの生活をしてきた加藤君を本当にすごいなと。つらい思いをしてきた選手はかなり伸びると思う」と評価。「映像でずっとチェックしていた加藤君を目の前にしたときに、素直にでかいなと。バッティングフォームがちょっと小さめに構える選手なので、小さいかなと思ったんですけど、意外とでかくて、大きいのを打てるバッターという期待感がある」と語っていた。
「いろんなことを勉強するのが楽しみ」

独特の構えから鋭いスイングで快打を連発している
1球にかける思い、執着心はナインも見習う点が多いだろう。加藤豪がグラウンドで躍動する姿は野球ができる喜びに満ちあふれている。入団会見ではメジャー・リーグと日本野球の違いを聞かれ、「ルール的にはボールも違う、ストライクゾーンも違う、ベースのサイズが違うから塁間も違う。いろんなことが違うので別のスポーツと考えてきています。素直に一からスタートするという考えなので、いろんなことを勉強するのが楽しみです」と語っていた。
目標は新球場のエスコンフィールドで世界一の球場にすること。大きな野望を持ち、新庄野球の申し子になる。
写真=BBM