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【大学野球】青学大18年ぶり5度目の日本一に感極まった河原井元監督が送った安藤監督を後押しする助言

 

「世代の近い3人がよくやってくれた」


青学大・河原井元監督はネット裏スタンドで母校の大学日本一を見届け、目を真っ赤にさせた


 母校・青学大を4度の大学日本一へと導いた河原井正雄元監督は、感極まった。

 青学大は明大との全日本大学選手権決勝(6月11日)で18年ぶり5度目の優勝(4対0)。自身が率いた2005年以来の頂点に立った。

 整列後、青学大ナインは三塁側スタンド、そして、ネット裏に一礼。ネット裏にいた河原井氏は何度もタオルで涙を拭き「あ〜っ。たまらん、もう……。本当にうれしいです」と目を真っ赤にさせた。言葉にならなかった。

「正直、明治には勝てないと思っていました。明治は地力のある東京六大学でリーグ3連覇。相当なチーム力がある。安藤監督、(大学を退職した)私の代わりに入った中野(真博、コーチ)、週末限定で指導してくれる四之宮(洋介、コーチ)と、世代の近い3人がよくやってくれました。その一言に尽きます」

安藤監督の指導者への道筋


 河原井氏は2019年1月から青学大を指揮する安藤寧則監督の恩師で、指導者への道筋を立てた。安藤監督は岡山大安寺高から一般入試で入学。「野球の技術でチームに貢献するよりも、指導が向いている。現役選手を断念することを意味するので、ショックはあったと思いますが……問答無用でした(苦笑)」と、大学3年9月から青山学院高等部の監督に就任させた。また、2年からは学生審判員としても、連盟運営に携わった。

 青学大では学生コーチとして河原井氏を支え、夕方からは高校野球を指導。多忙な日々も、すべてが「野球人・安藤」の肥やしとなった。

「高等部は正直、強くない。野球ができる体力もない。ただ、その中でも安藤は毎年、良いチームをつくってきた」

 栄光を極めた河原井監督だが、戦力が拮抗している東都大学リーグで「一部安定勢力」を維持するのは難しい。二部に降格した14年秋に退任。その後3年、二部から抜け出せず、18年に「緊急登板」したが、一部復帰はならず、1年でユニフォームを脱いだ。バトンをつなぎ、名門再建を託した安藤監督を、バックアップする立場となったのである。

「良い選手(高校生)を入学させて、(卒業後は)良いところに出す(就職)。ここを、良い循環にしないといけない。止まってはいけない。ウチは人数が少ないが、安藤はスカウティングが良い(スポーツ推薦入試は1学年で8〜9人)。学校のほうも、卒業できるようになった。安藤はやるべきことをやっている」

視線は次の戦いへ


 全日本大学選手権は相性が良い。出場した1993年(優勝)、96年(優勝)、99年(優勝)、2005年(優勝)、06年(準優勝)と、過去5大会で通算19勝1敗だった。今大会前、安藤監督を後押しするアドバイスを送っていた。

「出たら、負けんぞ!! 普通にやれば、勝てる。できなければ、負ける。実績を見てみろ!!」

 やはり、青学大は強かった。4試合、すべてで先制し、一度もリードを許すことなく、頂点に立った。試合後、安藤監督も男の涙を流したが、歓喜はこの日まで。すでに、秋への戦いは始まっている。安藤監督は大会前日の取材対応でこう漏らしていた。

「この春は優勝。仮にこの大学選手権で良い結果が出たとしても、通過点でしかない。秋6位で入れ替え戦に負ければ、二部に降格してしまう。それが、東都。怖さしかない」

 この言葉を聞けば、河原井氏も安心するはずだ。監督とは、リスクマネジメントが最大の仕事である。安藤監督はすぐに、2024年入学の高校生視察のため、各地へ足を運ぶという。大学野球の監督に、休みはないのである。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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