9回二死で156キロをマーク
6月18日の
ロッテ戦(横浜)で
佐々木朗希を攻略し、6対1と快勝して交流戦首位に浮上した
DeNA。その中で、バウアーが見せた投球は衝撃的だった。
9日の
オリックス戦(京セラドーム)に先発登板し、7回5安打2失点で今季3勝目をマーク。108球を投げて来日初の中4日の登板間隔で、14日の日本ハム戦(横浜)のマウンドに登った。過去には珍しくなかったが、先発と救援の分業制が確立した日本球界は先発投手の登板間隔は中6日が一般的だ。
中4日の登板は異例で、本来の状態だったとは言えない。試合序盤は140キロ台の直球だったが、カットボール、スライダー、シンカー、カーブ、新旧のスプリットチェンジを有効に使って制球に間違いがない。テンポよくアウトを重ね、6回二死で
アルカンタラを150キロ直球で空振り三振に打ち取ると、刀をさやに収める「ソードセレブレーション」のパフォーマンスを披露。試合終盤もギアを上げる余力が残っていた。1点リードの9回二死三塁のピンチで、
加藤豪将をこの日最速の156キロで追い込むと、最後はスライダーで見逃し三振で締めた。失点は7回に被弾したソロのみ。日本ハム・
加藤貴之との投手戦で試合時間は今季最短の2時間8分。来日最多の12奪三振で来日初の完投勝利を飾り、交流戦3連勝となる4勝目をマークした。
他の投手のお手本になる要素
「バウアーの投球には他の投手のお手本になる要素がたくさん詰まっていた。少ない球数で小気味良くアウトを重ねることで長いイニングを投げられる。力で封じ込めるだけでなく、変化球、制球力の質が非常に高い。メジャーでは中4日の登板が珍しくなく、90~100球で降板する。もちろん、シーズンを通じて中4日で投げるのではなく、コンディションに配慮しながら首脳陣が登板間隔を決めますが、バウアーの投球を見て、球団の垣根を超えて刺激を受けた投手が多いと思います。先発投手は中6日で1週間に1度投げるという日本球界のトレンドを覆すかもしれない」(スポーツ紙デスク)
故障のリスクに細心の注意を払わなければいけないが、1日短くして中5日で先発ローテーションを回すことが主流になる球団が出てきても不思議ではない。2年連続20勝をマークするなど5度最多勝を獲得した「平成の大エース」の異名をとる元
巨人の
斎藤雅樹氏は1989年に日本記録の11試合連続完投勝利をマークしている。一昔前は中5日の登板間隔が一般的で、エース級の投手たちは勝負どころの時期になると中4日で投げていた。
レジェンドも認める投球

多くの球種をしっかりと操って打者を抑え込んでいく
バウアー1人の存在が、ペナントレースの運命を大きく左右する可能性がある。現役時代に巨人で通算203勝をマークした球団評論家の
堀内恒夫氏は5月上旬に週刊ベースボールのコラムで、バウアー加入の大きなプラスアルファをつづっている。
「仄聞によると、『バウアーは日本へ来ることにあまり乗り気ではなかった』という。それを
三浦大輔監督が球団フロントを説得して、獲得させた。しかも日本では破格の年俸4億円を超える好条件で契約を結んでいる。それだけに三浦監督は開幕前から『もう一枚先発ピッチャーがそろえば今季は絶対に勝てるぞ!』という確かな手応えをつかんでいたのではないかな。真っすぐは150キロを優に超える。鋭く小さく曲がるスライダーのコントロールも抜群だからね。リスク承知で獲りにいくほどバウアーはすごいピッチャーだということだよ。“バウアー効果”で今季のDeNAはもう手がつけられないほど勝ち進むのではないかな。独走態勢に入ったとしても不思議ではない。それほど今季のDeNAは投打にわたる戦力が充実している」
タフネス右腕のバウアーが今後何試合投げ、白星を積み重ねられるか。相手球団にとって、手強い助っ人右腕になりそうだ。
写真=BBM