定岡正二氏、篠塚和典氏、川口和久氏、槙原寛己氏の書籍『昭和ドロップ!』がベースボール・マガジン社から発売されました。昭和に生まれ育ち、昭和、平成に輝いた4人が、巨人、長嶋茂雄、青春の多摩川ライフなど、あのころのプロ野球を愛あり笑いありでたっぷり語り合う1冊です! これは不定期で、その内容の一部を掲載していく連載です 「ハムやベーコンもです。カチカチになって、口の中が切れそうになったことがあります」(槙原)

『昭和ドロップ!』表紙
定岡正二さん、篠塚和典さん、槙原寛己さんで二軍生活について語ってもらった章の一部である。
槙原 そうそう、寮のメシはどうでした? 僕のときはナイターから帰ると、もう冷えてて、まずい……。
定岡 やめろよ! みんな帰ってくる時間も違うし、担当の方は一生懸命やってくださったんだよ!
槙原 でも、冷たかったですよね。
定岡 う~ん……、確かに冷たかった。それは認める(笑)。
槙原 カクテル光線を浴びた華やかな一軍の試合から帰ってきたら、昔の家にあったような蚊帳がかかった冷えたおかずと、ご飯しかない。
定岡 あのギャップはすごかったよな。それも認める(笑)。
篠塚 サンマもピーンと硬くなっていたよ。
槙原 ハムやベーコンもです。カチカチになって、口の中が切れそうになったことがあります。
定岡 それはさすがにうそだろ(笑)。
槙原 まあ、まあ、まあ(笑)。それで一軍に行ってた選手たちが文句を言い出して、僕の入団2年目くらいのときに食を見直そうってことで、上野精養軒のシェフを雇った。ナイターから帰ってきても、あったかい料理をつくってくれるようになったんです。
定岡 こうなったら言うけど、僕らの時代はカロリー計算の栄養士さんはいたけど、味は我慢してた。でもさ、僕は引退してからだけど、昭和の最後のあたりから環境面がどんどん変わって、今はびっくりするくらいよくなったよね。何年か前に新しい合宿所に行ったらもうホテルだったよ。プールはあるわ、食堂は好きなものをオーダーできるブッフェだし。
槙原 ウエートとかトレーニング施設もすごく充実していて、いくらでも練習できますよね。でも、今の選手は自分から練習するからすごいです。僕らのころ、寮の横にあった室内練習場が雪でつぶれたときがあったけど、みんな満面の笑顔でガッツポーズでしたもんね。「よし、これで練習しなくていい!」って(笑)。
定岡 でも、プールはうらやましいな。僕らのころは、夏は夜中、よみうりランドのプールに行った。こっそり開けといてもらってね。これは書かないほうがいいかな。
槙原 いいんじゃないですか。もう昔話ですから。