新守護神に抜てきされて好投

7月3日現在、リーグ3位の16セーブを挙げている田口
リーグ3連覇を目指す
ヤクルトが下位に低迷している。借金14で首位・
阪神と13ゲーム差。
村上宗隆、
山田哲人ら主力の状態が上がって来ない中、新しい役割で奮闘している投手がいる。守護神・
田口麗斗だ。
絶対的抑えだった
スコット・マクガフが昨季限りで退団。2021年に31セーブ、昨年は38セーブと抑えを務め、ヤクルトの連覇に大きく貢献した。今年の守護神は誰に託すか――。セットアッパーとして活躍する
清水昇、パワーピッチャーで三振奪取能力が高い
木澤尚文と候補がいる中で、
高津臣吾監督は田口を新守護神に抜てきした。
現役時代に日米通算313セーブをマークした高津監督は、田口が抑えにふさわしい資質を兼ね備えていると判断したのだろう。直球は140キロ台だが、安定した制球力と高い変化球の精度でピンチにも動じない。
巨人では先発の柱として活躍し、
廣岡大志(現
オリックス)とのトレードでヤクルトに移籍したのは21年の開幕直前。移籍当初はコマ不足の先発で期待されたが、左腕のリリーバーが不足していたため、シーズン途中に救援に配置転換された。
昨年は開幕から26試合連続自責点ゼロを記録するなど、45試合登板で1勝1敗18ホールド、防御率1.25の好成績をマーク。今年は抑えというポジションで輝きを放っている。26試合登板で0勝2敗16セーブ5ホールド、防御率1.75。セ・リーグの抑え投手では今季自責点ゼロの
ライデル・マルティネス(
中日)に次ぐ防御率で、十分に合格点を与えられる。
誰かのためにという感情で
田口は6月上旬に週刊ベースボールのインタビューで、抑えとして大事にしていることについて以下のように語っている。
「同点もしくはリードしている場面で投げているので、相手に得点を越されないことは大事にしています。例えば1点差で勝っていたら、1点を取られても負けではない。相手に追い越されないように意識して投げています。あとは、打たれても切り替えること。また、自分だけの感情だけでいかないっていうのを大事にしていますね。僕自身がベストを尽くすのはもちろんのことなんですけど、ただ自分のために腕を振るのではなくて、チームのために、そこまで試合をつくり上げてくれた先発投手、中継ぎ投手のためにも、つくってきたものを壊したくないっていう気持ちで投げる。誰かのためにという感情で投げるときのほうが僕はいいパフォーマンスを発揮しやすいので、そこは大事にしていますね」
高津監督、
石井弘寿投手コーチが現役時代に抑えで活躍したことにも言及し、「現役当時の映像を見ることがあるのですが、高津監督も石井コーチもマウンドでの姿が“熱い”。でも、ただ熱いだけじゃなくて、そこに技術もある。絶対こういうふうに投げるんだという意志が映像からでも目に見えて感じるので。僕自身も見習わないといけないというか、目指したいところです。追いつき、いつかは追い越せるようにしたいですね」と意気込みを口にしている。
投手陣の精神的支柱
田口は順調にいけば、プロ10年目の今シーズン中に国内FA権を取得する。
スポーツ紙記者は、「左腕のリリーバーが不足しているチームは多い。田口は27歳と若く、大きな故障がないのが魅力です。推定年俸8800万円とこのクラスの投手でお買い得と言える。FA権を行使すれば複数球団の争奪戦になることは間違いない。ただ、田口にはヤクルト愛を強く感じる。チームにもすっかり溶け込み、居心地が良いでしょう。長期契約でヤクルトに残留する可能性も十分にある」と分析する。
今年から投手キャプテンに就任し、投手陣の精神的支柱になっている。シーズンは折り返しの時期で、ここからチーム力が問われる。巻き返しに向け、田口がセーブを積み重ねる。
写真=BBM