すごい打者になる可能性

印象的な一打を多く放つドラフト1位・森下
阪神・
森下翔太は華やかなスポットライトが似合う。
7月12日の
DeNA戦(甲子園)。首位攻防戦は難敵の
トレバー・バウアー相手に2点差を追いかける苦しい展開だったが、森下のバットがチームを救った。8回無死一塁で152キロ直球を振り抜くと、打球は左中間スタンドへ。2号2ランで試合を振り出しに戻すと、9回一死満塁の好機で打席が回ってきた。地鳴りのような阪神ファンの声援に包まれても、「すごい冷静で周りもよく見えていました」と肝が据わっている。三番手・
ウェンデルケンの外角直球を素直に打ち返すとライナー性の打球はセンターへ。サヨナラ犠飛で勝負を決めた。
不動のリードオフマンとして稼働していた
近本光司が右肋骨骨折で7月4日に登録抹消。チームの緊急事態で、一番の代役として抜擢されたのは
島田海吏と森下だった。島田が5日の
広島戦(マツダ広島)でプロ初アーチとなる先頭打者弾で勝利に貢献すると、森下はさらなる輝きを放つ。9日の
ヤクルト戦(甲子園)で0対0の8回に
木澤尚文の150キロ直球を左中間に運ぶプロ初アーチの決勝弾。11日のDeNA戦(甲子園)もマルチ安打と好調をアピールすると、先発が右腕・バウアーの翌12日も4試合連続スタメンに抜擢され、大仕事をやってのけた。
他球団のスコアラーは、「速い直球を強くはじき返せるのが森下の大きな強み。緩急にも体の軸が崩れずに自分のスイングができる。打球の質、遠くへ飛ばす才能は
岡本和真(
巨人)を彷彿とさせる。すごい打者になる可能性を秘めている」と警戒を務める。
解説者も高く評価
オープン戦で打率.314の好成績を残して開幕スタメンを勝ち取ったが、春先に20打席連続無安打と快音が止まり4月17日に登録抹消された。プロの壁にはね返された形となったが、野球評論家の
伊原春樹は森下の打撃を高く評価していた。週刊ベースボールのコラムで以下のように綴っていた。
「野手で大きいのは中大からドラフト1位で入団した森下翔太の存在だ。8日のヤクルト戦はスタメン落ちしたが、それまで開幕から6試合続けて六番・右翼でスタメン出場を果たしていた。その打撃を見ると、まず恵まれた体から思い切りバットを振れることが大きい。もちろん、バットを振り回しているということではない。投手は打者のタイミングを外そうと考え、いろいろな球種を駆使して打者を抑えにくる。しかし、森下は体を前に出されるようなことがない。投手に翻ろうされる打席が少ないのだ」
「タイミングの取り方にムダがなく、寝かし気味に構えたバットを投球に対して最短距離で出していく。タイミングが取れているから、自分の中のきちんとしたスイングができるのだろう。加えて軸もしっかりとしているから、強い打球も飛ばせる。ボール球にも手を出さず、選球眼も抜群。三振を喫したのも22打席目が初だ。ここまで打率.250、本塁打はゼロだがプロのスピードに慣れてくれば数字は右肩上がりになっていくはずだ」
首位独走へ森下がキーマン
森下は試合を決める劇的な一打が目立つ。5月19日に一軍昇格すると、翌20日の広島戦(甲子園)で0-0の9回二死一、二塁の好機に、相手右腕・
森下暢仁から左前に運ぶプロ初のサヨナラの適時打。6月9日に2度目のファーム降格となったが、23日に昇格すると、近本に代わる新たな切り込み隊長として打線を牽引している。
「近本さんの代わりになるとは思っていない。自分らしいガツガツとしたプレーで勝利に貢献できたら良いなと思います」。
再び勢いを取り戻して首位独走へ。阪神は森下がキーマンになりそうだ。
写真=BBM