誰にも似ていない

『つじのじつ話』
ベースボール・マガジン社から前
埼玉西武ライオンズ監督、
辻発彦氏著の『つじのじつ話』が発売された。
サインお渡し会も東京では三省堂有楽町店さん、ジュンク堂池袋店といずれもびっくりするくらいの大盛況! 8月6日には福岡の丸善博多店さんでも開催予定だ。
今回もそのチョイ出しです。
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第2章の最後は、僕の考える『監督像』について書いてみます。
選手、コーチとして、たくさんの監督の下でやってきました。
プロ入り後は、球界で名将と言われる方々ばかりで、野球への厳しさ、選手への声の掛け方、メディアとの付き合い方。それぞれの方からいろいろなことを学び、監督時代、参考にさせていただいたことはたくさんあります。逆に「これは違うな」とやらなかったことも数々ありました。
監督になってから何度となく受ける質問が「辻さんは、どの監督の影響が一番強いのですか」「どの監督に似ていると思いますか」です。
おそらく
廣岡達朗監督、
森祇晶監督、
野村克也監督、
落合博満監督の名前を挙げて言ってほしいのだと思いますが、僕はいつも「特にありません」と答えています。
結局、僕は僕です。辻発彦は辻発彦で、ほかの誰かにはなれません。
そもそも誰かを理想にして、そこに近づきたいと思ったこともありません。よく「自分らしく」と言っていますが、それも別に意識したわけじゃありません。いろいろな経験の積み重ねの中で、自分なりのスタイルが自然にできたと思っています。
気がついたら自分らしい、自分にしかできない監督になっていた、ということです。
野球は理屈じゃありません。状況は常に変化し、守備、走塁、打撃と、すべてその場その場で感じ、対応しなければいけないものです。
監督としてもそうです。時代が違えば野球も変わります。当たり前ですが、現役時代の西武ライオンズ黄金時代と、就任当時の投手力、守備力に難があり、打力だけがよかった埼玉西武ライオンズで同じ戦い方はできません。
ほかにもメンバー構成、その時点のチーム状況、試合状況などによって、何がベストかは違ってきます。マニュアルなどつくりようがありません。
時代が変わり、野球が変わり、人も変わる。そして、そのすべてが日々刻々変化する。いつもそれを感じながら対応していかなければいけないと思っていました。
だから僕はいつもそのとき自分が感じたことを大事にし、行動に移してきました。
レット・イット・ビー、あるがままです。