広角に本塁打を打てる打撃

巨体を生かしたパワーあふれる打撃が魅力の末包
阪神と熾烈な首位争いを繰り広げる
広島。敵地・甲子園で迎えた7月29日の首位攻防戦2戦目は延長12回まで4時間56分の激闘の末に2対2の引き分けに終わった。
野手陣は
秋山翔吾、
菊池涼介、
野間峻祥、
會澤翼、
松山竜平、
上本崇司ら30代の中堅、ベテランの活躍が目立つが、20代の選手たちも高い能力を持った選手たちが多い。今季から捕手に復帰して攻守の要となっている
坂倉将吾、正遊撃手として期待される
小園海斗……。そして、和製大砲として期待される
末包昇大だ。
プロ2年目の今季は開幕からファーム暮らしが続いていたが、
ライアン・マクブルームが打撃不振で登録抹消されたことに伴い、6月13日に一軍昇格した。当初は代打での出場機会が多かったが、7月中旬以降はスタメンで起用されるように。体重100キロを超える巨体から豪快なスイングで、広角に本塁打を打てる打撃スタイルは大きな魅力だ。「八番・左翼」でスタメン出場した7月26日の
ヤクルト戦(マツダ広島)で、2回に先制の右前適時打を放つと、2点差を追いかける4回一死一、二塁で逆転の2号3ラン。相手左腕・
高橋奎二のチェンジアップを右中間に叩き込み、この一打が決勝打となった。
浮き沈みがあった1年目
右の和製大砲でドラフト6位入団。
新井貴浩監督と共通している。決して器用ではない。キャンプでユニフォームを泥だらけにして一生懸命に取り組む姿勢も、指揮官の現役時代と重なる。社会人野球・大阪ガスで四番を務めた主砲は、入団1年目の昨年に春季キャンプで紅白戦も含め、実戦8試合すべてで四番起用された。
佐々岡真司前監督の期待は大きく、開幕戦も「七番・右翼」でスタメン出場。新人の開幕戦先発出場は2006年の
梵英心以来、球団史上16年ぶりだった。
5月8日の
DeNA戦(マツダ広島)では4回に左翼席上段へ本拠地初アーチとなる2号満塁アーチ。野球評論家の
伊原春樹氏は週刊ベールボールのコラムで、「セ・リーグで、ほかに目についたのは
中日の
鵜飼航丞と広島の末包昇大だ。ともにプロ初本塁打を放っているが、ファーストストライクから力強いスイングで投手に圧を掛ける。将来の主軸としてチームを引っ張る存在になることを予感させる。昨年、新人で史上4人目の打率3割&20本塁打を達成した
牧秀悟(DeNA)のようになれるか。非常に楽しみな存在であるのは間違いない」と強打者としての素質を高く評価していた。
だが、プロの世界は甘くない。変化球に対する脆さを見せると、相手バッテリーに徹底的に突かれた。5月23日にファーム降格すると、8月2日に再昇格したが、10日も経たず抹消された。31試合出場で打率.299、2本塁打、14打点。決して悪い数字ではないが、80打席で選んだ四死球は1つのみ。ボール球を見極める選球眼が大きな課題だった。
確実性を高めて一軍へ
昨オフはカブス・
鈴木誠也の合同自主トレに弟子入り。パワーとミート能力を兼ね備えた鈴木の金言は大きな財産になった。春先にファーム暮らしが続いても気持ちが切れることはない。自慢の長打力だけでなく、確実性を高めて一軍に昇格。
西川龍馬が右脇腹肉離れで今月12日に戦線離脱し、外野の一角がレギュラー白紙の状態になっている。ここで結果を出さなければ、外野の定位置をつかめない。変化球に対する対応力が上がり、打棒で強烈に存在をアピールしている。
高卒でドラフト1位入団し、本塁打王、打点王を共に2度獲得するなど球界を代表するホームランアーチストに上り詰めた
岡本和真(
巨人)は同学年の27歳だ。まだまだ打撃技術は及ばず実績にも大きな差があるが、飛距離で言えば末包も見劣りせず、球界トップクラスだ。シーズン最後まで今年は一軍で打ち続ける。
写真=BBM