波に乗り切れない今季

プロ9年目を迎えた石田。その能力を考えればもっと勝利を積み重ねることができるはずだ
広島と
阪神を追いかける3位・
DeNA。エース・
今永昇太、助っ人右腕の
トレバー・バウアー、今季8勝と復活した
東克樹が奮闘する中、先発の軸として期待されるのがプロ9年目左腕の
石田健大だ。
今季は4月18日の
巨人戦(長崎)で2勝目を挙げて以来、3カ月白星から見放された。好投しても打線の援護に恵まれない試合が続いた時期もあったが、左腕を振り続けている。今月13日の阪神戦(甲子園)で、5回3安打無失点に抑えて今季3勝目をマーク。0対0の5回一死二、三塁で先制の左前2点適時打を放つなどバットでも勝利に貢献し、敵地で続いていた阪神戦の連敗を8で止めた。今月30日の
ヤクルト戦(神宮)は4回7安打4失点と試合を作れずに今季5敗目。なかなか波に乗り切れない。
スポーツ紙記者は、石田について評する。
「
アレックス・ラミレス前監督に『優勝するために絶対必要な投手』と期待を掛けられ、
三浦大輔監督の信頼も厚い。先発、救援どちらでも投げられるし、大崩れしない。ただ、投げている球の質の高さを考えるともっとすごい成績を残しても不思議ではない。慎重になりすぎてテンポが悪くなるときがあるので、そこを解消すればもっと勝てると思います。今年FA権を取得しましたが、人的補償がないCランクというのが魅力です。先発、救援で層が薄いチームは多い。権利を行使すれば獲得に乗り出す球団があると思います」
必要とされる役割を全う
チームに必要とされる役割で全うしてきた。プロ2年目の16年は先発の軸として153回を投げ、9勝4敗、防御率3.12をマーク。球団史上初のクライマックスシリーズ進出の立役者となった。同期入団の
山崎康晃は石田と17年2月に週刊ベースボールの企画で対談した際、こう語っている。
「昨シーズンは、健大が投げれば試合は作ってくれるという信頼感がありました。計算が立つので、ブルペンでも安心して見ていられました。健大が1年目からいろいろ悩んでいたのも近くで見ていたから、マウンドで投げる彼の背中を見ながら『すごいな』と思っていましたね。やっぱり、健大はいろんな人のアドバイスを吸収できるんじゃないかな。周りの人に聞いたり、技術を貪欲に盗む姿勢がいい。自分のモノにして、パフォーマンスに変えていく力がある。まぁ、僕が偉そうに言える立場じゃないですけど、冷静にそう見えました」
石田は謙虚な姿勢を崩さず、救援陣に向けて感謝の思いを口にしている。
「いや、全然そんなことなくて。確かにいろんな投手から学ぶ意識を持ってやっていましたけど、それがうまくハマって勝ちが積み重なったとしか思っていません。実際に昨年は1人で1試合を投げ切った試合はないですし、ヤスや三上(
三上朋也、現巨人)さんら中継ぎ、抑えの人たちがいなかったら僕に勝利はつかなかったわけですから。そう考えると自分の力で勝った試合は1試合もなく、助けてもらってばかりだったと思います。僕ら先発は週に1回しか投げません。抑えをやっているヤスなんかは、9回にならないと登板があるかないか分からないという難しい状況で、肩を作って、休ませて、また肩を作ってという日々。その中で結果を出さなければなりません。自分がやれ、と言われたら絶対に無理だなと思います」
昨年から先発再転向
18年以降は救援での登板機会が増え、20年は50試合登板でチームトップの25ホールド、防御率2.53の好成績を残す。三浦監督が就任した昨年は再び先発に配置転換。新型コロナウイルス感染した影響で4月上旬から2カ月戦列を離れたため15試合登板にとどまったが、7勝4敗、防御率2.95をマークした。
優勝争いでは満足できない。25年ぶりのV奪回に向け、石田が後半戦で白星をいくつ積み重ねられるか。
写真=BBM