「日替わり打線」が機能

8月30日のソフトバンク戦で2本塁打を放ち勝利に貢献した頓宮
オリックスが強い。8月29日のソフトバンク戦(長崎)に敗れて連勝が8で止まったが、翌日の同カード(PayPayドーム)では勝利。2位・
ロッテと10.5ゲーム差をつけて首位を独走している。
リーグ3連覇が見えてきたが、戦前は
近藤健介、
嶺井博希、
有原航平、
ロベルト・オスナ、
ジョー・ガンケルらを獲得したソフトバンクを優勝候補に推す声が多かった。オリックスは打線の中軸として活躍していた
吉田正尚がレッドソックスにポスティングシステムで移籍。
森友哉が
西武からFA移籍で加入したが、得点力が懸案材料だった。
シーズンに入っても主力選手たちが額面どおりに活躍しているわけではない。森友哉は2度の故障で戦列を離れ、
杉本裕太郎も打率.230、12本塁打、26打点と打撃不振で8月19日に登録抹消された。だが、チームの窮地を救う孝行息子たちが次々に現れる。
頓宮裕真はプロ5年目で覚醒。リーグトップの打率.314をマークし、15本塁打、48打点とクリーンアップで不可欠な存在に。
紅林弘太郎も打撃で成長の跡を見せ、
茶野篤政、
宜保翔、
野口智哉ら若い力が台頭してきている。
中川圭太、
宗佑磨、
若月健矢ら中堅選手の貢献度も高い。419得点はソフトバンクに次いでリーグ2位。「日替わり打線」が機能し、十分に合格点をつけられる。
投手陣も強固な陣容
投手陣も
山本由伸、
宮城大弥のダブルエースに加えて、高卒3年目の
山下舜平大が大ブレーク。16試合登板で9勝3敗、防御率1.61と投手タイトルを狙える位置につけている。左腕・
山崎福也も18試合登板で9勝3敗、防御率3.45と先発ローテーションで稼働。さらに、夏場以降に先発でチャンスを与えられた
東晃平も4試合登板で3勝0敗、防御率2.33とネクストブレークの予感が漂う。救援陣も
宇田川優希、
山崎颯一郎、
阿部翔太、
比嘉幹貴、先発から救援に配置転換された
山岡泰輔、守護神の
平野佳寿と質、量共に12球団屈指の強固な陣容だ。
野球評論家の
堀内恒夫氏は、
中嶋聡監督の手腕を高く評価する。
「忘れてはいけないのは中嶋監督の存在だ。彼は目立たないところが良いね。それが現代の名将の絶対条件だよ。どこかの監督みたいに、必要以上に目立つパフォーマンスを披露しない。だから、選手の力を引き出すことができるんだね。『心はもと活(い)きたり、活(い)きたるものには必ず機あり』。この言葉は、幕末の志士であり思想家の吉田松陰が発した格言だよ。活きた心を持つ人は、それを活かせる機会に必ず出会う。監督の志が高ければ、チームも方向性を見失わないで、必ず好結果を引き出すことができるというわけだよ」
黄金時代の西武に重なるチーム作り
他球団のマークが厳しくなる中、勝ち続けることは至難の業だ。パ・リーグでリーグ3連覇を達成したチームは、1990~94年にリーグ5連覇を飾った西武までさかのぼる。ソフトバンクが17年から4年連続日本一に輝いたが、18、19年は西武にリーグ連覇を許してクライマックスシリーズで下克上を果たして頂点に上り詰めている。リーグ優勝を続けることがいかに難しいか。データが如実に示している。
リーグ5連覇を飾った西武は
工藤公康(元ソフトバンク監督)、
渡辺久信(現西武GM)、
郭泰源、
渡辺智男、
石井丈裕ら強力先発陣と鉄壁の守備が強さの秘訣だった。
スポーツ紙記者は、「オリックスは当時の西武とチーム作りが重なります。投手を中心とした守りのチームで、白星をつかんでいく。外部補強に頼らず、生え抜きの選手が主力として長年稼働している点も共通しています。今オフは山本由伸がメジャー挑戦の可能性がありますが、宮城に加えて山下という次期エース候補がいるのでガクッと落ちることはないでしょう。リーグ4連覇、5連覇の可能性は十分にあると思います」と期待を込める。
黄金時代を迎えたオリックス。リーグ3連覇に向け、手綱を緩めずに突っ走る。
写真=BBM