元南海-大洋の佐藤道郎氏の書籍『酔いどれの鉄腕』がベースボール・マガジン社から発売された。 南海時代は大阪球場を沸かせたクローザーにして、引退後は多くの選手を育て上げた名投手コーチが、恩師・野村克也監督、稲尾和久監督との秘話、現役時代に仲が良かった江本孟紀、門田博光、コーチ時代の落合博満、村田兆治ら、仲間たちと過ごした山あり谷ありのプロ野球人生を語り尽くす一冊だ。 これは不定期で、その内容の一部を掲載していく連載である。 なぜ店を会員制にしたか

『酔いどれの鉄腕』表紙
本の内容をちょい出ししている連載。これはミチさんがなぜ『野球小僧』を会員制にしたかの話。ミチさんの話を本にしようと思った話でもある。
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店の中には、現役時代の俺の表彰のペナントも飾っているけど、色も褪せてないし、きれいだってみんなびっくりする。実は、ずっと黒いビ
ニール袋に入れて納戸の中にしまいっ放しにしてたんだ。だから虫にも食われてないし、日に焼けて変色したりもない。
要は興味がなかったんで、ほったらかしにしていたってことね。草野球の監督をやっていた店の常連さんにたまたま見せたら「これはもったいないよ。店に飾ろう」となって、その人の弟さんが額縁屋だったんで、きれいな額を作ってくれたんだ。昔の自慢してるみたいで、ちょっと恥ずかしかったけど、喜んでくれるお客さんもいるんで、ずっと店に飾っている。
店に来てくれた選手やOBのサイン色紙も飾っているけど、
王貞治さんだけは色紙だけじゃなく、壁に直接書いてもらったんだ。だって、うれしいじゃない、世界の王がこんな小さな店に来てくれたんだよ。
この店を会員制にしたのは、最初のころ、野球教室とかでいないときもあったんで、前のヨメさん一人じゃ、おかしな客が来たとき、かわいそうだと思ってね。彼女と別れたあともそうしているのは、王さんが来てくれたからさ。また王さんが突然来てくれて、そのとき短パン、サンダル履きのあんちゃんが店にいたら嫌だったからね。
王さんは最初に来たとき、こう言ってくれた。
「『野球小僧』か。いい名前の店をつくったね。俺も野球小僧だったからさ」
うれしかったね。俺もそうだし、野村克也さんも稲尾和久さんもそうだよな。水島新司先生やエモ(江本孟紀)や落合博満、ウチのお客さんもみんなそう。俺の周りは野球小僧ばっかりなんだよね。
最近は年で肩や腰が痛くなることはあるけど、まだまだ元気いっぱいさ。あっ、1つだけ深刻な病気があった。金欠病。コロナから店も暇で、これからどうなることやらだよ。店がつぶれないうちに、遊びに来てよね。