消耗戦にこそ無類の強さを発揮

明大・田中監督は早大1回戦[9月23日]を落とした[3対5]が、慌てる様子は一切、見せなかった[写真=矢野寿明]
記者会見冒頭、明大・田中武宏監督は報道陣に逆取材してきた。
「久しぶりに先に負けた。1回戦で負けるのはいつ以来でしょうか?」
明大は早大1回戦(9月23日)を3対5で敗退し、今季3試合目で初の黒星を喫した。
明大が初戦を落とすのは、昨秋の慶大1回戦(10月15日)以来、約1年ぶりだった。明大はこのカードを1勝2敗で勝ち点献上も、最終カードの立大戦で連勝。最終週の早慶戦の結果を受けて、2016年以来の春秋連覇を遂げた。田中監督が「チーム村松」と言う、
村松開人主将(現
中日)が最上級生の代である。
今春は10勝1敗1分、勝ち点5の完全優勝でリーグ3連覇。5カードのうち、4カード(慶大1回戦は引き分け)で1回戦を先勝していた。今秋の東大との開幕カード(第1週)は連勝。そして、迎えた2カード目となる早大との第3週。田中監督が「チーム上田」と言う、
上田希由翔(4年・愛産大三河高)の代で、初めて1回戦での黒星となったわけである。
85年ぶりの4連覇を目指す今秋の明大。田中監督は「チーム上田としての春秋連覇」と、毎年、メンバーが入れ替わる学生野球において、あくまでも1年一区切りのスタンスを貫く。だからこそ、1回戦の敗戦が昨秋であっても、だいぶ前に感じたようだ。
先勝を許しても、悲観した様子は微塵もない。
「帰ってからのミーティングで言おうと思っているんです。『逆に追いついて、追い越すのが、先輩たちは圧倒的に多かった。(2回戦以降の戦いを)楽しみにしている』と」
明大は消耗戦にこそ、無類の強さを発揮する。かつて「人間力野球」をモットーに37年、母校を率いた島岡吉郎元監督は練習量で精神面を鍛えてきた。教え子である田中監督は伝統を継承し「粘りのメイジ」をつないできた。2勝先勝の勝ち点勝負において、初戦黒星スタートでも決して慌てることはない。
1勝1敗とし、3回戦へ持ち込む。上田主将は「全勝優勝できるとは、思っていませんでしたので……。チームは落ちていない」と、リーグ戦の醍醐味はこれから、と言わんばかりに、前を向いた。
毎シーズン、特別な盛り上がりを見せる早明戦。天皇杯争いを占う一戦から目が離せない。
文=岡本朋祐