監督をだます結果に!?

　10勝＆10本塁打。

　85年ぶりの東京六大学リーグ4連覇を目指す明大は4年生が節目の記録をマークし、チームの勝利に貢献した。明大は第4週の立大2回戦(10月1日)で連勝(3対1)し、開幕から東大、早大に続き3カード連続で勝ち点を挙げた。残すカードは第6週(同14日〜)の慶大戦、第7週(同21日〜)法大戦だ。

　立大2回戦を7回途中1失点で勝利投手となったのは右腕・蒔田稔(4年・九州学院高)だ。3年春から積み上げた白星は通算10勝に達した。周囲を和ませるのが得意な蒔田は「10勝できるとは……。成長したんだなと感じる」と、報道陣の笑いを誘った。自ら実感した「成長」とは、技術面よりも、精神的な安定を挙げる。投球については「相手が打ち気できたときに、カーブをうまく使えた。コースを間違えることなく、自分の持ち味が出せた」。

　3回まで打者9人をパーフェクト。田中監督は冗談交じりに「最後までいくかな？　と思ったら、蒔田にだまされた。与えられたところで(救援を含めて)3人がよく投げてくれた」と語った。7回表は左腕・藤江星河(3年・大阪桐蔭高)がリリーフし、なおも二死満塁のピンチでは浅利太門(3年・興國高)が抑え、2点リードを守り切った。154キロ右腕・浅利は「蒔田さんと藤江が必死につないでくれたので、絶対、抑えてやろうという気持ちでした。終盤、僅差の展開だったので、抑えることができて良かったです」と話した。

　蒔田は「監督をだます結果となったので……(苦笑)。今週は大好きな空き週なので、練習からアピールして慶大戦に向けて、しっかり準備をしていきたい」と意気込んだ。立大1回戦でエース・村田賢一が15勝目(1敗)を挙げ、同級生の活躍に刺激を受ける蒔田は「村田の背中は遠い(蒔田は10勝4敗)ですが、頑張ります」と、リーグ4連覇へ全力で腕を振ることを誓った。

「チームのための1本を出せれば」

　打線をけん引したのは不動の四番・上田希由翔(4年・愛産大三河高)である。1対0の3回裏二死二塁から右越え2ランを放った。「インコースの真っすぐ。打った瞬間でした。あのコースをファウル、引っ掛けることが多かったんですが、素直にバットが出て良かったです」。1年秋に初アーチを放って以来、リーグ戦通算10号だ。報道陣からの質問を受けて「あ〜そうなんですね……。気にしていないですし、節目の数として打てて良かったです」と、主将として何よりも、チームの勝ち点奪取を喜んだ。

　上田は通算71打点とし、早大・鳥谷敬(元阪神、ロッテ)と並ぶ歴代7位タイとした。歴代トップは早大・岡田彰布(阪神監督)の81打点である。「無理だろうな、と把握しているので、チームのための1本を出せれば。これまでと変わらず、勢いをづけられる1本を出していきたいと思います」。また、通算安打は92本とした。史上34人目の100安打までカウントダウンに入った。残り2カードでの記録達成に期待がかかる。

　明大が第6週で対戦する慶大は、ともに開幕から無傷の勝ち点3、6勝1敗で並ぶ天王山である。春は明大が2勝1敗1分と激闘を制しており、この秋も名勝負が展開されそうだ。

文＝岡本朋祐　写真＝BBM