神宮には今季最多2万7000人の大観衆

リーグ優勝をかけた早慶戦を前に早大・小宮山監督[左]は慶大・堀井監督[右]にあいさつした[写真=矢野寿明]
[東京六大学秋季リーグ戦第8週]
10月28日(神宮)
早大3x-2慶大(早大1勝)
勝ち点(2勝先勝)を取ったほうが優勝の早慶戦。神宮球場には今季最多2万7000人の大観衆が集まった。
試合前の打撃練習を控え、慶大・堀井哲也監督と早大・小宮山監督はバックネット裏付近であいさつ。健闘を誓い合った。
小宮山監督はどうしても、永遠のライバル・慶大サイドに伝えたいことがあった。
早大は今秋の第2週、開幕カードの東大戦で連勝。シーズン序盤のヤマ場となった第3週、明大とのカードを1勝2敗で落とした。明大は今春までにリーグ3連覇。小宮山監督は「何としても止めたい」と、8月の新潟・南魚沼キャンプから猪軍団を強く意識してきたが、力及ばなかった。早くもあとがなくなった。
「明治との(1勝1敗で迎えた)3試合目、まったく思ったような野球ができずに負けた。残り(3カードで)全部勝てば優勝の可能性がある。まさにそのシナリオどおりにきている」
立大、法大との2カードで4連勝。第6週終了時点で7勝2敗、勝ち点3でV戦線に踏みとどまった。この第6週で、慶大は明大とのカードを2勝1敗で勝ち点を奪取した。この時点で、早大の自力優勝が復活。第7週で明大が法大2回戦を落とし、明大の85年ぶりの4連覇が完全消滅。天皇杯をかけたV争いは、慶大と早大の2校に絞られたのである。
「慶大さんが明大さんを倒してくれたおかげで、(早稲田が)息を吹き返した。堀井監督に『ありがとうございます』と。(優勝はどちらかが)勝ち点を挙げて決まる。お互いすっきりした形でゲームに臨めるので、良い試合をしたい、と。後々、語り継がれるような優勝決定戦に、という話をさせてもらったんです」
サヨナラ打で早大が先勝
慶大1回戦。早大は1点リードの9回表に守りのミスが重なり、逆転される。しかし、その裏、無死満塁から尾瀬雄大(2年・帝京高)の同点適時打、続く
小澤周平(2年・健大高崎高)のサヨナラ打で早大が先勝した。
「9回表と裏のドラマ。言ってみるものですね」と試合後、小宮山監督は報道陣の笑いを誘った。指揮官はこの試合、投手起用、攻撃についても積極的なさい配に出た。先発のエース右腕・
加藤孝太郎(4年・下妻一高)は完封ペースだったが「私の長年のキャリアから1対0は、相当な疲労になる」と7回97球で交代させた。また、1点を追う9回裏無死一塁の場面ではバントを使わず、自チームの打者と相手投手の力量を見て、強攻策に出ると、左前打とチャンスを広げた。
早大の活動拠点である安部寮の監督室には、
野村克也氏の「監督にとって、決断は常にかけである。かけには根拠が必要」が貼ってあるという。この教えを実践。小宮山監督は試合前「ウチは他力で、ここまで来た。失うものはない」と言った。2020年秋以来のリーグ優勝へ王手だ。
「明日で気持ち良く、大逆転優勝を決めたい」(小宮山監督)
2回戦も球史に残る「名勝負」が期待される。
文=岡本朋祐