まさに「集大成」の攻撃

8回、無死一、三塁から1点差に迫る適時打を放った近本
[日本シリーズ第5戦]
11月2日(甲子園)
阪神6-2
オリックス(阪神3勝2敗)
この試合はまったく読めない展開でしたね。先発の
田嶋大樹に7回4安打無失点に抑えられていた阪神打線が8回、
山崎颯一郎にスイッチしたところで爆発。確かに2試合続けてベンチ外だった山崎の状態は万全ではなかったですが、先頭の
木浪聖也が二塁内野安打と悪送球で二塁へ。木浪の懸命な走塁が生んだものですが、これが大きかった。さらに代打・
糸原健斗が左前打でつなぐ。
岡田彰布監督は8回の攻撃を「今年の集大成」と言っていましたが、下位打線からチャンスをつくるのはまさに阪神打線の真骨頂です。
無死一、三塁で勝負強い
近本光司が右前適時打で1点差に。続く
中野拓夢が犠打をきっちり決めて一死二、三塁とチャンスを拡大します。この一、二番は本当に能力が高い。得点には結びつきませんでしたが初回も近本が出塁して、中野が犠打を確実に成功させ、3回は先頭の近本が中飛に倒れましたが、中野が中前打で出塁しています。両者がカバーし合いながら好機を演出していく。この回の近本のように下位からのチャンスで得点に結びつける。抜群の一、二番ですね。
ここでオリックスベンチは山崎をあきらめ
宇田川優希をマウンドへ送りました。4連投でしたがボールの勢い自体はいつもと変わらないように感じました。結局、
森下翔太が逆転の適時三塁打を放ちましたが、ここは“よく打った”のひと言です。カウント2-2から2球、フォークに食らいつきファウル。そして7球目は高めの釣り球が引っ掛かり、低めへと投げ込まれ変な角度がついたボールゾーンへの直球でしたが、うまく拾いました。その後も阪神打線は攻撃の手を緩めず、
大山悠輔、
坂本誠志郎が適時打を放ち、6得点。オリックスベンチはなす術がなかったですね。
この猛攻を生んだのは8回のマウンドに上がった五番手・
湯浅京己の好投があったからでしょう。7回ダブルエラーで追加点を許すなど阪神にとって嫌な流れはありましたが、湯浅は2者連続三振を含む三者凡退とリズムをつくりました。前日も1球でピンチを切り抜け勝ち越しを許さずサヨナラを呼ぶなど、阪神のキーとなる選手になっています。
このシリーズ、ちょっとしたことで流れが変わる展開になっていますが、第6戦も王手をかけた阪神が簡単に日本一にたどり着くとは思いません。目の離せない展開が最後まで続いていくでしょう。
写真=BBM