OBも評価する守備力

今季は昨年に続き、自己最多タイの132試合に出場した吉川
4年ぶりのV奪還へチーム作りを進める
巨人。
阿部慎之助新監督は一塁・
岡本和真、三塁・
坂本勇人、遊撃・
門脇誠をレギュラーで固定することを明言。残り1枠の二塁。主力選手である
吉川尚輝は定位置を確約されていない。吉川の能力を考えればもっと活躍してもらわなければ困る――。指揮官だけではない。首脳陣の総意だろう。
吉川は他球団の選手たちにも「天才的な野球センス」と一目置かれる存在だ。2020年から二塁のレギュラーに定着。目を見張るのが守備能力だ。俊足を生かし、球際に強い。広い守備範囲で幾度もチームの窮地を救ってきた。プロ7年間でゴールデン・グラブ賞の獲得経験がないことが意外に感じる。現役時代に球界を代表する名二塁手として活躍した球団OBの
篠塚和典氏は、読者からの質問にプロフェッショナルが答える週刊ベースボールの企画「ベースボールゼミナール」で吉川の守備について、以下のように評している。
「現在の吉川選手の守備について言うならば、まず『自信を持って、当たり前のことを当たり前にこなしている』ということが前提にあります。二塁守備というのは一塁までの送球の距離も遊撃や三塁よりは短いですから、ある程度は落ち着いてプレーすることができるポジションです。ファインプレーというのは流れの中であとからついてくるものであって、まずは当たり前のことを当たり前にこなすことが何よりも求められます。今の吉川選手はとても高い水準で、この前提をクリアすることができています。
「加えて高い身体能力、特にスピードを備えています。一歩目の反応の速さには目を見張るものがありますし、肩も弱いわけではなく、むしろ強いほうだと言えるでしょう。このスピードと肩があるから、局面によっては深い守備位置で守っていても余裕をもってプレーすることができるのです。二塁守備のベーシックな部分に自信が持てていることで、さらに予測を含めたポジショニングをいろいろと考えることができるのでしょうし、実際に考えていることがプレーからも伝わってきます。こうしたことのトータルで、吉川選手は意識的に守備範囲を広げているのです」
課題はバッティング
球界屈指の守備能力を持ちながら、殻を破り切れない。課題は打撃だ。ミート能力が高く、難しい球をヒットゾーンに運ぶ技術がありながら好調を維持できない。今季は132試合に出場して打率.256、7本塁打、36打点、4盗塁。3.4月は打率.180と状態が上がらずスタメンから外れるときもあった。5月以降は状態を上げていったが、シーズン終盤の9月は月間打率.214と快音から遠ざかった。出塁率.308はチャンスメーカーとして満足できる数字ではない。打撃フォームが定まらず試行錯誤を繰り返し、盗塁数も昨年の16から大きく減らした。
吉川も思い描いた結果を出せていない現状に、危機感が芽生えている。レギュラー格にも関わらず今年11月の秋季キャンプに参加。
二岡智宏ヘッド兼打撃チーフコーチの助言を受けながら、フォーム固めに汗を流す姿が見られた。
内野で唯一レギュラーが固まっていない二塁でチャンスをつかもうと、他の選手も必死だ。
湯浅大、
増田陸、
中山礼都のほか、ドラフト4位で入団した即戦力・
泉口友汰(NTT西日本)が有力候補に挙がる。ライバルは多いが、来季は攻守で「不動の二塁」として躍動できるか。一、二番を打つチャンスメーカーとしての信頼を勝ち取り、打率3割、20盗塁がノルマだ。
写真=BBM