さらなる奮起を期待

今季、長距離砲として大きく羽ばたくことが期待される石川
低迷期からの巻き返しへ。
中日が「補強の目玉」として獲得した強打者が、
巨人から移籍した
中田翔だ。
日本ハムで打点王を3度獲得。巨人に移籍後は打撃フォーム修正を敢行したことで、確実性が上がった。一昨年は打率.269、24本塁打、68打点をマーク。昨年は故障でコンディション調整に苦慮したことが影響し、打率.255、15本塁打、37打点と不完全燃焼だったが、打撃技術は錆びついていない。中日でもポイントゲッターとして期待が大きい。
昨年はリーグワーストの390得点。貧打は昨年に限った話ではなく、長年の課題だ。ただ、光は見えている。
岡林勇希と
大島洋平という球界を代表するヒットメーカーをそろえ、昨年は
DeNAから現役ドラフトで移籍した
細川成也が打率.253、24本塁打、78打点と覚醒。まだまだ好不調の波が激しく、相手バッテリーのマークが厳しくなったシーズン終盤は打率を落としたが、レギュラーに定着するためには通る道だ。持ち味の長打力を見失わないことがポイントになる。さらに中田の加入で、打線に厚みが増した。
その中で奮起してもらわなければ困るのが、生え抜きの選手たちだ。特に四番でチーム最多の85試合にスタメン出場した
石川昂弥は、一回りも二回りも成長してほしい。昨年は121試合出場で打率.242、13本塁打、45打点をマーク。入団以来故障に泣かされ、初の規定打席に到達して自己最多のアーチを放ったことは評価できるが、まだまだ課題は多い。得点圏打率.184は規定打席に到達した選手の中で最も低かった。
石川は週刊ベースボールの取材で、「もっとやれた。その思いが強いです」と悔しさをにじませる。右の長距離砲として修羅場をくぐり抜けてきた中田とチームメートになり、得られることは多いだろう。「実績があって、軸になる人が来た。ホームランバッターだし、勝負強い。そのあたりを学びたいです。聞きたいことが出てきたら、聞いていく感じになると思います」と貪欲だ。
スイング自体は素晴らしい
アマチュア時代から、野球センスは目を見張るものがあった。東邦高では3年春にエースで全国制覇に大きく貢献。投手として非凡な能力を見せていたが、打撃でも高校通算55本塁打をマーク。スケールの大きい右の長距離砲はドラフトの目玉として注目され、1位指名で
ソフトバンク、中日、
オリックスが競合した。
球を遠くへ飛ばす能力は、天賦の才能だ。野球評論家の
篠塚和典氏は昨年7月に週刊ベースボールの企画「連続写真に見るプロのテクニック」で、石川の打撃を絶賛していた。
「ボールの下から水平にボールをとらえにいくスイングのイメージは、かつて同じ中日で四番を打っていた
落合博満さんを彷彿とさせます。スイング自体は素晴らしいのですから、あとは経験と本人の意識、練習によってコンタクトの確率を上げていくだけ。真の覚醒の日を楽しみにしています」
間違いなくキーマン
今季がプロ5年目。失敗に目をつむり、将来への期待を込めて起用される時期は過ぎている。
村上宗隆(
ヤクルト)は高卒5年目の一昨年に打率.318、56本塁打、134打点で三冠王を獲得。日本人選手のシーズン最多本塁打記録を塗り替えた。
岡本和真(巨人)も高卒4年目の18年から6年連続30本塁打をマーク。昨年は自己最多の41本塁打を放ち、3度目のタイトルを獲得した。
中日を取材するスポーツ紙記者は、「石川が打つとベンチが盛り上がる。高卒の和製大砲が『不動の四番』に座っているチームは得点力が落ちない。石川も岡本、村上のようなスラッガーに成長してほしい。打率.280、20本塁打、80打点をクリアすれば、チームは変わる。キーマンになることは間違いない」と期待を込める。
竜のホームランアーチストは、覚醒の時を迎えられるか。
写真=BBM