指揮官も絶賛する逸材左腕

2年目の今季、どこまで飛躍を果たすか注目される門別
リーグ連覇を狙う
阪神で、注目度が高いのが高卒2年目の
門別啓人だ。昨年は一軍デビューを飾るなど2試合登板。ウエスタン・リーグでも12試合登板で2勝2敗、防御率2.78をマークした。
選手を褒めることが珍しい
岡田彰布監督が絶賛するほどの逸材だ。週刊ベースボールのコラムで以下のように語っている。
「23年シーズン、一軍で投げさせてはいるけど、その後の進化が止まらない。ホンマ、惚れ惚れするボールを投げる。これは間違いなく24年の新戦力になる。オレはかなりの自信をもって送り出すつもりなんよね。まあ高卒2年目のサウスポーということで、比較になるのが同じころの
井川慶か。オレは若いころの井川はよく知っているし、03年、05年のリーグ優勝時にエースとしてマウンドで発揮した投げっぷりは目に焼き付いている。その井川と比べたら……、2年目という時点でははっきりと言えば、門別のほうが上。それほどの資質があるとオレは感じている。何しろ球質が素晴らしい。伸びがあるストレートはホンマ、上質なんよね。井川は多くのイニングを投げられるスタミナと、チェンジアップという変化球があったが、門別にはそこまではない。それでもあのストレートがあれば……と夢を見させてくれる投手なんです」
門別と同じ高卒2年目
2003年に20勝をマークするなど阪神のエースとして一時代を築いた井川と重なる左腕は、2月の春季キャンプで一軍キャンプスタートが決定。だが、楽しみな素材は門別だけではない。同じ高卒2年目の
茨木秀俊も春季キャンプの一軍メンバーに抜擢された。即戦力というより、今後の将来性を見据えて高いレベルを経験させたいという首脳陣の思惑があるのだろう。スポーツ紙記者は、「プロで1年鍛え上げ、体が大きくなった。野球センスは門別に決して見劣りしない。スタイルとしては
西勇輝に近いですね。門別と切磋琢磨して将来は左右のエースになってほしい」と期待を込める。

帝京長岡高時代の茨木
札幌で生まれ育った茨木が素質開花する転機になったのは、帝京長岡高への進学だった。現役時代に
日本ハム、
ソフトバンク、台湾球界でプレーした
芝草宇宙監督に誘われ、入学を決断。2年春にエースとなり、芝草監督の指導を受けて入学時に130キロだった直球は17キロアップし147キロに。3年夏に新潟県大会決勝まで勝ち進んだが、日本文理高・
田中晴也(
ロッテ)との息詰まる投手戦で1対2と惜しくも敗れた。同校史上初の甲子園出場にはあと一歩届かなかったが、投打でスケールの大きいプレーでプロのスカウトの注目度を高めた。足が速く、打球も鋭い。際立つ野球センスが最も輝くのがマウンドだ。182センチの上背でしなやかなフォームから直球、スライダー、チェンジアップ、カーブを操る。メリハリをつけた投球は高校生離れしており、大成する雰囲気を漂わせていた。
お手本になる先輩右腕
高卒1年目の昨季はプロの舞台で自己最速を更新する149キロを計測。体が大きくなり、球に力強さが増している。ウエスタン・リーグで12試合登板し、3勝3敗、防御率6.57。立ち上がりに失点を重ねることが多かったが、この経験も成長への財産になる。
一軍にはお手本となる投手たちがそろっている。投球スタイルを考えると、参考になる点が多いのが西勇ではないだろうか。
オリックスに入団し、高卒2年目の10年に主に救援で18試合登板。翌11年は10勝を挙げて先発ローテーションに定着し、通算118勝をマークしている。シュート、スライダーを駆使してベースの両端をいっぱいに使った投球術で凡打の山を築き、フィールディング能力、牽制技術のうまさは球界トップクラスだ。
一軍と二軍は注目度がまったく違う。先輩たちの投球を見て力不足を痛感するかもしれないが、大きく飛躍するヒントを得られる可能性もある。茨木と書いて「いばらぎ」と読む。門別とともに、将来を嘱望される右腕に要注目だ。
写真=BBM